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最弱の不死者<イモータル>  作者: ネツアッハ=ソフ
決戦、魔王と不死者
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不死者の帰還

 大地に倒れ伏すライルとアトラ。それを、アザトホートはつまらなさそうに見ている。


 無事な者はアザトホートとマナの二人のみ。恐らく、マナはあえて見逃されたのだろう。既に、マナに反抗の意思は無い。心が()れてしまっている。


 星々(ほしぼし)の魔力による大嵐。それにより、周囲一帯を()ぎ払ったのだ。


 桶を引っくり返した様な豪雨(ごうう)に轟く(いかづち)。そして幾つもの巨大な竜巻。


 それはまさしく、神の所業だ。人類の領域を遥かに逸脱している。


 「くっ・・・・・・」


 「うぐうっ・・・」


 ライルとアトラは苦悶の声を上げる。どうやら、かなりのダメージを受けたらしい。身動ぎ一つを取ってもかなり辛そうだ。


 アザトホートはそれを一瞥(いちべつ)し、そしてマナの方を向く。


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 マナは無反応。呆然と虚空を見詰めている。


 魔王は無感情な瞳で魔法杖を向ける。そのままマナを取り込もうとした。刹那(せつな)―――


 「っっ!!?」


 アザトホートの体内で、魔力が暴走を始めた。


 迸る黒い稲妻(いなづま)。黒い大風(おおかぜ)が吹き荒れる。魔王の表情が苦悶に歪む。


 『―――――――――っ!!!』


 「・・・・・・え?」


 確かに聞こえた声。その声に、マナが反応する。その声は―――


 確かに、それはテラの思念だ。


 『ああああああああああああああああああああああああああっっ!!!』


 「ぐああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」


 絶叫と共に、アザトホートの身体から何かが分離する。それは・・・。


 「テ、ラ・・・・・・?」


 「ただいま、マナ。ごめん・・・心配掛けた」


 テラだった。穏やかに微笑みながら、マナの前に立っていた。


 その優しげな微笑みに、マナの顔がくしゃりと歪む。瞳から涙が(あふ)れる。


 「テラ、テラっ・・・テラあ・・・・・・」


 テラの胸に(すが)り付き、泣きじゃくるマナ。テラはそんな彼女の頭を優しく撫でる。


 その顔は、何処までも優しい笑みを浮かべていた。


 「馬鹿なっ!!!」


 響き渡る驚愕の声。其方へ目を向けると、信じられないと言った表情のアザトホートが。


 「何故だ!!何故、戻って来られた!!どうして俺の中で、そのまま眠り続けなかった!!!」


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 テラは答えない。黙って魔王を睨み付ける。その瞳は強い覚悟を宿していた。


 そんな彼を、マナは不安そうに見詰める。


 「・・・・・・テラ」


 「大丈夫だ、マナ。僕はもう、大丈夫」


 そう言って、テラはマナを抱き寄せた。そして、アザトホートを強く睨む。


 「っ!?」


 「魔王アザトホート。いや、あえて仙道次郎と呼ぼう。お前の想い、願いの根幹は理解した。それは充分理解出来るだろう。けど、僕の大切な人に手を出すなら、僕はお前を許さない!!」


 そう、マナを強く抱き締めて言う。マナは目を見開いて、テラを見詰めた。


 その瞳は、何処までも力強い光を宿していた。


 「くっ!!」


 アザトホートは双蛇の魔法杖を地面に突き立て、何事か呟く。すると、星々が不気味に輝き。


 局地的な大嵐が発生した。星の魔力による大嵐が迫る。


 「テラっ!!」


 マナがテラの前に踏み出し両腕を広げる。その瞳にはテラを守ろうという意志が見える。


 しかし、テラはマナの肩を摑むと、自身の後ろへ引っ張った。マナが愕然とした顔をする。


 「大丈夫だ―――」


 そう言って、テラは大嵐を睨み付けた。


 ・・・睨み付けた。只それだけの事―――それだけで、大嵐が消し飛び時空が砕け散った。


 「ガッ!!!」


 同時にアザトホートの身体も宙を舞い、盛大に吹き飛んだ。何時の間にか、場所は魔王の城の玉座に戻って来ていた。


 アザトホートが壁に叩き付けられ、崩れ落ちる。


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 テラは黙ってアザトホートの傍に近寄る。アザトホートは魔法杖の先端をテラに向けるが、力が上手く入らずそのまま杖を落とす。ふっと諦めた様な笑みを浮かべた魔王。


 「俺の、負けか・・・」


 「・・・・・・そうだな、お前の負けだ」


 すっと、テラは指先をアザトホートに向ける。止めを刺す為だ。その表情は険しい。


 アザトホートは抵抗しようとはしない。満足そうに、否、何処か諦めた様に笑っている。


 そして―――


 「やめてええええええええええええええええっっ!!!」


 突如、テラとアザトホートの間に黒い騎士甲冑を着た少女が割って入った。その姿に、アザトホートは驚愕の表情を見せた。


 「マ、マリー!!何故お前が此処に!!!」


 「私が呼んだ―――」


 その声に、全員が振り向く。其処にはオールバックの金髪に血の様な赤い瞳をした男が居た。


 何処かの王族の様な、華美(かび)な服装を纏っている。


 「ドラキュラ・・・貴様・・・」


 アザトホートは忌々しそうに男を、ドラキュラを見た。ドラキュラは溜息を一つ吐く。


 「・・・もう少しマリーの想いに耳を傾けてやれ」


 「・・・・・・っ、マリー?」


 アザトホートは自身の胸元で泣きじゃくるマリーを見る。マリーの泣き顔。その顔を見ると、心がズキリと締め付けられる様に痛む。


 マリーはその目から涙をぽろぽろと流しながら、それでもアザトホートを真っ直ぐに見て言った。


 「私は・・・・・・っ、私はジローが傍に居ればそれで良かった。ジローがどれ程の覚悟を決めて選んだ道でもっ、それでも私はそれだけで良かった!!!」


 「っ!!?」


 その言葉はアザトホートの、仙道次郎の心に強く響いた。胸元で泣きじゃくるマリー。


 マリーを泣かせない為に、その為だけに魔王となった。しかし、今マリーは胸元で泣いている。


 思わず、マリーを強く抱き締める。胸がズキリと痛む。


 「仙道次郎。お前の想い、覚悟の強さは認める。けど、お前は・・・お前達は何処かでズレて、すれ違ってしまったんだ」


 「・・・・・・・・・・・・」


 テラの言葉にアザトホートは項垂(うなだ)れ、強くマリーを抱き締める。マリーもすがり付く様に、彼の胸元に強く抱き付いた。


 こうして、一連の騒動は終わりを告げた。テラはマナとライル、アトラを見渡して言った。


 「もう帰ろう・・・家へ」

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