表
「テラっ!!テラあっ・・・!!」
玉座の間を悲痛な声が響き渡る。マナが地に膝をつけて泣き叫ぶ。彼女の心は既に折れていた。
どうしてこうなったのか?解らない。心が理解を拒む。
好きだったのに。愛していたのに。ようやく結ばれた筈だったのに・・・。どうして?
理解出来ない。理解したくない。
「・・・・・・それほど奴が恋しいか?なら、貴様も取り込んでやろう」
俺の中で、永遠に共に居るが良い―――
そう言って、今度はマナに魔法杖を向ける魔王。それを察知したライルが殴り掛かる。
しかし、其処に割って入る者が居た。少年だ。
「魔王陛下に手は出させない!!!」
「くっ!!!」
少年のナイフ捌きは恐ろしいほど鋭く、重い。恐らく、その技量は神域にも達するだろう。
並の修練では身に付かないであろう、武の極致。流石のライルも手こずる強さだ。
一方、アトラも行動を起こしていた。
「呵々っ!!さて、魔法勝負といこうかっ!!!」
アトラが魔法杖を掲げると、世界の法則が組み換わっていく。あらゆる事象が魔王に牙を剝く。
しかし―――
「ふむ、少々狭いな」
全く動じる事なく、指をパチンっと鳴らす。すると、景色が入れ替わり、その場に居た全員が気付けば星空の煌めく荒野に立っていた。
魔法遣いの戦いは、如何に世界の法則を掌握するかにある―――
ようは支配権の奪い合いだ。陣取り合戦とも言える。支配する領域の規模こそが全てだ。
「これが・・・魔王の力か・・・・・・」
ライルが戦慄する。しかし、今は油断している場合では無い。
「よそ見している暇は無いよ!!」
「くっ!!!」
少年のナイフが、ライルの頸動脈ぎりぎりを掠める。今のは危なかった。
ライルは冷や汗を流す。全く隙が無い。油断も出来ない。
「そんな物か、最強生物っ!!!」
「ちっ、せいっっ!!!」
ライルは舌打ちをし、大地を殴り付けた。その衝撃で、大地震が起きる。大地が大きく陥没し、最大震度は7にまで達する。
「何っ!?」
大地震により、少年に一瞬の隙が出来る。その一瞬で充分だ。
ライルは少年との距離を詰め、少年を捕らえた。ライルが笑う。
「つっかまーえたっ」
「しまっ!!」
「どっ、せいっっ!!!」
ライルは背負い投げの要領で少年を投げ飛ばし、地面に叩き付けた。地面が大きく陥没する。
「ぐはっっ!!!」
少年は何とか身体を起こそうとするが、そのまま意識を失い倒れ伏した。ライルの勝利だ。
・・・一方、アトラの方は激しい攻防が繰り広げられていた。
魔法による、領域の支配権の奪い合い。空間を激しいスパークが奔る。
一見、互角に見える戦い。しかし、その実アトラが不利だった。
アザトホートは余裕を残しているのに対し、アトラは一杯一杯だ。限界などとうに超えている。
「・・・ふむ、無名は敗れたか。なら、もう良いか―――」
「?」
アザトホートが何かを呟いた。良く聞き取れなかったアトラは怪訝な顔をする。
しかし、次の瞬間、それは愕然とした表情になった。
「もう、加減は無しだ。此処で終わらせよう」
「っ!!?」
領域の支配権が奪われていき、爆発的に拡大する。そして―――
天の星々が流転を始め、廻り出す。やがて、ある位置で止まると不気味に輝き―――
そして。




