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最弱の不死者<イモータル>  作者: ネツアッハ=ソフ
決戦、魔王と不死者
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魚面の怪異

 しばらく歩くと、(しお)の香りが風に乗って漂ってきた。海が近いのだろう。


 遠くを眺めると、小さな町が見える。


 「港町、か?」


 「そうみたいですね。・・・けど、こんな場所に?」


 テラの呟きに、マナも首を傾げながら同意する。こんな場所に町がある事に、全員が首を傾げた。


 此処は魔王の支配領域である異界(いかい)だ。只の港町だなんて、ありえないだろう。


 そもそも、魔王の支配領域に入ってから一人も人間に会っていない。まず間違いなく人間の町では無いだろうと予測する。と、言うより確実にそうだろう。


 テラ達は警戒心(けいかいしん)を最大に高める。


 「呵々、おや?あそこに誰か居る様だ」


 アトラの瞳が目前に人影を捕らえる。テラ達もその人影を確認する。しかし、それは只の人では断じて無かった。


 否、そもそもそれは断じて人間では無い。とても、人間(ヒト)とは呼べないだろう。


 それは、魚の頭をした人型の怪物だった。漫画やアニメの中に出てくる様なファンシーな物では決して無いだろう怪異な姿。それこそ、クトゥルー神話に登場する深きものどもの様な感じさえする。


 そのあまりにも怪異な姿に、マナは絶句する。様々な魔物は見ても、魚人は初めてなのだろう。


 口元は恐怖に引き攣り、テラの背後に隠れてしまう。・・・どうやら、マナはこういうグロテスクな造形の魔物はかなり苦手らしい。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」


 テラも流石にこれには絶句している。アトラとライルも口元を引き攣らせ、魚人を見ている。


 すると、魚人も此方に気付いたのか、此方に振り返った。しばし見詰め合うテラ達と魚人。


 と、次の瞬間―――


 「ブオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


 「「「「っっ!!?」」」」


 ビクゥッ!!!


 奇声を発し、猛烈な勢いで駆け寄ってくる魚人。一瞬驚いて硬直するテラ達だが、それどころでは無いのは一目で解るだろう。


 各々身構えるテラ達。マナも表情を引き締め、不屈の瞳で魚人を睨む。


 しかし、其処で予想外の事態が起こる。きらりと、一瞬魚面の瞳が光った気がしたその瞬間。


 「ようこそ、おこし下さいましたっ!!皆様方!!!」


 「「「「・・・・・・は?」」」」


 見事な土下座だった。魚人は勢い良くスライディングで土下座をすると、丁寧な口調で応対した。


 もはや、テラ達は何事なのか理解出来ない。皆、一様に呆然として硬直している。


 見ると、その背後に魚人の群れが大勢で土下座をし、歓迎と書かれた旗が(なび)いている。


 「「「「「ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」」」


 奇妙な声で叫ぶ魚人の群れ。その叫びに大気がびりびりと震える。


 果たして、これは歓迎されているのだろうか?テラ達は余りに予想外の事態に、呆然としていた。


 まあ、それもさもありなんという事だろう。


 ・・・・・・・・・


 港町のとある宿で、テラ達は魚人の群れに歓迎されていた。何故こうなったのか?テラ達には全く理解出来ずに困惑している。マナなど、終始呆然としていた。


 「いやはや、よくぞおこし下さいました皆様方!!我ら魚人族インスマスは皆様御一考を誠心誠意心より歓迎いたします!!!私、魚人族の長であり、この港町の町長を務めさせて頂いておりますテニエル=インスマスと申します!!!」


 「・・・・・・・・・・・・はあ」


 魚人の長、テニエルはオーバーリアクションで自己紹介する。そして、続けて他の魚人達もそれぞれ自己紹介をする。


 しかし、それにしてもテニエルの口調も動作も、何だか芝居がかっていてかなり胡散臭い。何だか演劇をする役者の様な、言ってしまえば全体的にオーバーリアクションだ。


 そんな事もあって、テラ達はすっかり警戒(けいかい)しきっている。全く信用出来ないのだ。

それを察したのか、テニエルは大仰に肩を(すく)めて溜息を吐いた。


 「そんな怖ーい顔をしないで下さいよー。私、こう見えて少し傷付きやすいんですよ?」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 実に胡散臭い。そして、かなり鬱陶(うっとう)しい。テラは思わず、眉をひそめる。


 そんなテラの姿に、テニエルは首を横に振ってわざとらしく落ち込んだ。かなりウザい。


 「酷いですねー。そんなに私が信用出来ませんかー?出来ませーんかー?」


 「・・・・・・・・・ノーコメントだ」


 うぜえ!!!ちらちらと此方を見てくるのがかなり鬱陶しい。他の魚人も皆、大仰に首を横に振る。


 アトラは額に青筋を浮かべ、ライルは先程から無表情だ。マナは、涙目で(おび)えている。


 テラは頭痛を堪える様に額を押さえ、重く溜息を吐いた。それを見たテニエルは何を思ったのか、懐から粉薬らしき物の入った袋を取り出し、テラに差し出した。


 「頭痛ですか?薬をどうぞ!!」


 「結構だっ!!!」


 「そうですか・・・では・・・」


 余計頭が痛くなってきた。テラは眉間に(しわ)を寄せ、再度溜息を吐く。


 駄目だこいつ・・・まともに相手をするとこっちが疲れる。テラ達は陰鬱な気分になった。


 今思ったが・・・・・・この魚人、自己陶酔型(じことうすいがた)だ。


 要するに、自分自身に酔いしれるタイプである。度し難いまでのナルシスト。


 つまり、こんな自分が本気でかっこいいと思っているのである。全く理解し難い。テラは三度目の溜息を吐いたのだった。

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