"パーティー"結成
ライルがカルデラを倒し、アトラが魔法の縄で縛った直後―――
「お父さん!!」
「エリス!?」
家から飛び出してきたエリスを、ライルは慌てて受け止める。驚いた事にエリスの顔色は良く、かなり体調が良さそうだ。
・・・先程までの姿を考えると、驚くべき変化である。
「エリス、お前身体の方は大丈夫なのか?」
「はい!私、こんなに体調が良いのは初めて!全部、テラさんのお陰です!」
そう言って、エリスは嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。・・・その顔を見たライルは乾いた笑い声を洩らすと、顔を俯けて涙を流した。
「は、ははっ・・・良かった、エリスの病が治って・・・っ、本当に良かったっ」
「お父さん・・・」
そんなライルの姿を見たエリスも、涙を瞳に滲ませた。二人のそんな姿を見るだけで、テラは自分のした事は間違いでは無かったのだと、そう思えた。
「良かった・・・」
知らず、そう呟いたテラをマナは微笑みながら見ていた。
・・・・・・・・・
その後、駆け付けた衛兵達によってカルデラは連れていかれた。・・・最後に笑みを浮かべていたのが気になるが。
「娘の病を治してくれてありがとう。とりあえず、お礼の事もあるし家に―――」
ライルが礼を言い、テラ達を家の中に入れようとした瞬間、ガサッという音と共に近くの茂みからカルデラが飛び出してきた。
何故此処に居る?奴はさっき衛兵に連れていかれた筈。・・・そんな考えが頭を過り、一瞬の間テラが硬直した。カルデラの手には銀のナイフが握られている。
ドスッ
カルデラの持つナイフがテラの左胸を抉る。この程度の傷、不死者のテラには大した事無い・・・筈だった。しかし―――
「ぐっ・・・ごほっ」
「テラっ!?」
傷が再生しない。テラは堪え切れずに喀血する。
マナの悲鳴が響く。
「くはっ、このナイフには不死殺しの呪いが刻まれている。例え、どれほど強力な不死性を持とうとこのナイフは不死者を殺す」
そう言い、カルデラは握ったナイフを深く抉り込む。テラは更に血を吐く。
「テラ!?」
泣きそうなマナの悲鳴。カルデラは勝ちを確信した顔をする。
しかし―――
「そうかよ。だがな・・・」
テラは左胸に刺さった銀のナイフを、無理矢理引き抜いた。・・・左胸の傷は消えていた。
傷痕すら残らず、傷が消えている。ありえない。異常だ。
「なっ!?」
「残念ながら、僕の能力は不死じゃないんだ。全く別次元の力だよ」
テラの不死性はその力の付属品でしかない。テラの本当の力はもっと強力な能力だ。
それを聞いて、カルデラは激しく狼狽する。
「なら、貴様の本当の能力は何だ!?」
「僕の本当の能力は"破壊"と"創造"。全ての異能と権能、宇宙の根源たる力だ」
「・・・なっ、あ」
絶句。そのあまりの規格外の力に、カルデラは言葉を失う。
その瞬間、ライルの拳がカルデラを吹っ飛ばした。カルデラはそのまま気絶。その後、再び駆け付けた衛兵達に連れていかれた。
どうやら、衛兵達に連れていかれたのはカルデラそっくりのゴーレムだったらしい。・・・ゴーレムを身代りに、本物は茂みに隠れていた様だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・テラ?」
僅かに違和感を感じ、マナがテラに声を掛けた。瞬間―――
ふらり、とテラの身体が揺らぎ、倒れた。
「っ、テラ!!」
テラは薄れゆく意識の中、ぼんやりと考える。無茶をしすぎたと・・・。
エリスに生命力を分け与えたすぐ後、カルデラから不死殺しのナイフで刺され、更にその後無理矢理殺された身体を再創造するという無茶をした。その反動だ。
マナの泣き叫ぶ声を遠くに聞きながら、テラは意識を手放した。
・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・此処は」
「目が・・・覚めましたか・・・?」
目の前にはマナが、泣き腫らした顔で此方を見ている。何日も寝ていないのだろう。酷い顔だ。
テラはマナの頬を優しく撫で、安心させる様に微笑む。
「っ!?」
途端、マナの顔がくしゃりと歪み、テラに抱き付き泣き出した。テラは優しく微笑みながら、その背中をそっと撫でる。
愛しい人、その体温を感じる。自分の為に泣いてくれる。それだけで胸の奥が温かくなる。
優しいひと時。それを邪魔する無粋な奴は居なかった。
・・・それからしばらく後。マナはようやく泣き止んだ。テラの胸元にしがみ付いて離れないが。
マナの背中を優しく撫でながらテラは部屋の外、ドアの向こうに声を掛けた。
「・・・そろそろ入っても良いぞ」
ドアが開き、ライル、アトラ、エリスの三人が入ってくる。・・・アトラは相変わらず、にやにやと笑っている。
テラは軽く溜息を吐く。
「アトラはともかく、ライルとエリスには気を遣わせたみたいだな」
「呵々、失礼な!」
アトラは笑いながら怒るという器用な事をしている。が、テラは気にしない。
ライルとエリスは苦笑する。
「と、それはともかく。テラ、お前が眠っている間に話は聞いた。魔王の許に行くのに、俺の力を借りたいんだろ?」
「・・・ああ、そうだ。是非、ライルの力を貸して欲しい」
テラはライルの瞳を真っ直ぐに見て頼み込む。ライルも、そんなテラの瞳をじっと見返す。
やがて、ライルは「ふぅっ」と息を吐く。
「わかった。エリスの恩もあるし、俺も力を貸そう」
「・・・ありがとう。助かる」
そうして、全ての準備が整った。後は魔王との対話に臨むだけだ。




