ゴーレム遣いと最強生物
一時間としばらくして、ようやく泣き止んだエリス。人前で泣いた事が恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして俯いている。中々可愛らしい。
逆に、マナは頬をふくらませて不機嫌そうだ。テラは思わず苦笑する。
その姿に、ライルも苦笑を漏らしつつ、テラに尋ねる。
「ところで、どうやってエリスの病を治すんだ?」
「うん、まあ簡単な話だよ。少しだけ、僕の生命を分け与えてこの娘の生命力を活性化させる」
そう言った瞬間、エリスが驚愕の声を上げる。
「そんな!?自分の生命を分け与えるなんて、それでは貴方の命が!!」
言いたい事は分かる。要は、他者の命を救う為に、自分の命を削ると言っている様な物だ。それは安易に呑める話では無いだろう。
しかし、テラに限っては話は違ってくる。何故なら―――
「まあ、問題は無いよ。僕は死なないしね」
「死な、ない・・・?」
エリスがきょとんっとする。ライルも良く分からなかったのか、怪訝な顔をしている。
そう、死なないのだ。文字通り無限の生命を持つテラの生命力を少し削った程度で、死ねる筈が無いのである。
それを説明すると、二人とも呆然とした顔をした。鳩に豆鉄砲を食らわせたら、丁度こんな顔をするのだろうか?
「二人とも、面白い顔をしてないでそろそろ戻って来い」
「「はっ!?」」
「息ぴったりだな、お前等。中々面白いぞ」
そう言い、テラは溜息を吐く。面白いと言いながら、その顔は呆れ返っている。
場の雰囲気を切り替える為、ライルはごほんっと咳払いする。
「と、取り敢えずだ、お前は不老不死で、エリスの病を治してくれるんだな?」
「ああ、そのとおりだ」
「では―――」
ドゴンッッ!!
瞬間、凄まじい轟音と共に大地が揺れ動く。かなり大きな揺れだった。
「なっ、何!?」
エリスが困惑した様な、何処か怯えた様な声を上げる。そして、テラの身体にしがみ付く。
エリスの、柔らかい胸の感触がテラの身体に伝わる。同時にマナの鋭い視線が突き刺さる。
テラは思わず苦笑を漏らす。
この瞬間にも、轟音と揺れは断続的に続いている。只の地震では無いだろう。それは明らかだ。
「ライル、アトラ、外の様子を見てきてくれないか?こうも揺れたら治療に集中出来ん」
「あ、ああ・・・、分かった」
「呵々、了解した」
そう言って、二人は外に出て行く。部屋の中にはテラ、マナ、エリスの三人が残る。
「じゃあ、そろそろ始めようか」
「は、はいっ・・・」
エリスは若干緊張しているのか、表情が少し硬い。テラはエリスの緊張を解す為、頭を撫でる。
「あっ・・・」
エリスが頬を朱に染め、何処かぽーっとした視線をテラに向ける。対するマナは、何処か面白く無さそうな顔をしている。
「むーーーーーっ」
「はあっ・・・、始めるぞ」
思わず、テラは溜息を吐いた。もう、何か頭が痛い気分だ。
憂鬱な気分になりつつも、テラはエリスの胸の真ん中に手を当てる。
瞬間、エリスの身体に温かい何かが流れ込んでくる。それは云わば、生命力という物だ。
エリスの身体に染み渡る様に、隅々まで広く行き渡る様に、生命力が流れ込んでいく。
同時に、テラはエリスの体内に意識を向ける。エリスの身体を蝕んでいる病、それを見付けたテラは早急にそれを"破壊"する。
次第にエリスの顔色が良くなってきた。治療行為を終え、テラはエリスの身体から手を離した。
「終わったぞ、調子はどうだ?」
「身体が軽い・・・、嘘みたいに調子が良いです・・・」
呆然とした声で、エリスが呟く。自分の病が治ったのが信じられないのだろう。
「大丈夫、嘘じゃないさ。エリスの病は治ったよ」
そう、テラが声を掛けた瞬間、堪え切れずにエリスは泣き出した。泣けども泣けども、涙は止め処なく溢れてくる。
テラは若干苦笑しながら、エリスの頭を優しく撫で続けるのだった。
・・・・・・・・・
一方、ライルとアトラは―――
外に出た二人の前には、巨大なゴーレムとその肩に乗った老紳士の姿があった。老紳士は不敵な笑みを浮かべ、二人に告げた。
「此処にテラという男がいるだろう?そいつを即刻引き渡して貰おうか」
老紳士は遥か高みから見下した、既に勝ちを確信した顔で言った。その余りの傲慢さにライルの身体からは闘気が、アトラからは魔力が溢れ出る。
ライルが不快気な声音で問う。
「誰だよ、お前」
「私の名はカルデラ、最果てのゴーレム遣いカルデラだよ」
カルデラと名乗った男が指を鳴らすと、カルデラの背後の大地が蠢き、かなりの数の巨大ゴーレムが出現した。目測だけで、数十体以上は居るだろう。
その一体一体の大きさも、数十メートルはあるだろうか。
「さて、これでテラを差し出す気になったかな?」
「木偶の坊だろ、こんなの―――」
「・・・何?」
ライルの言葉に、カルデラの顔が不快そうに歪む。ライルは取り合わずに更に言う。
「この程度の木偶の坊、何万体居ようと大した事は無い」
「ふんっ!所詮は只の強がりだ、行け!!」
カルデラの合図と共に、ゴーレム達が一斉に動こうとする。その瞬間―――
ドカアアアアアアアアアンッッッ!!!
轟音と共に、数十体以上の巨大ゴーレムは一斉に粉々に砕け、吹っ飛んだ。ライルを見ると、拳を突き出した姿で立っていた。
「なっ・・・あっ・・・!?」
自分を乗せていたゴーレムを砕かれ、バランスを崩したカルデラは地面に落下する。数十メートルくらいの高さから落ちたカルデラだが、ゴーレムを作成する応用で地面を操り、何とか無傷で地面に着地した。
しかし、その瞬間カルデラの首元にアトラの魔法杖が突き付けられる。
「呵々、チェックメイトだ」
「ぐっ・・・」
カルデラが悔しそうに呻く。その視線が、ライルに向く。
「思い出したぞ。嘗て、最強生物とまで言われた男が居た。お前の事だな?ライル」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ライルは答えない。その後、駆け付けた衛兵達にカルデラは捕縛された。




