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最弱の不死者<イモータル>  作者: ネツアッハ=ソフ
不死身の男
11/52

黒魔術師ネロ

黒魔術師の登場。

 運命的な出会いに憧れていた。


 物語みたいな出会いに憧れていた。


 少女を救う王子様の様な、困った時に助けてくれる人に憧れていた。


 そんな少女、マナの前に現れたのはへらへらと笑うよく分からない男だった。


 けど、そんな彼にも心の闇というのは存在するみたいで、そんな彼の事をもっと知りたいと、救いたいと思ったのは確かだった。


 テラとマナが初めて会ったその日の夜。お風呂での騒動があった、その後の事―――


 「さっきは本当にごめんなさい」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 テラはマナに只管謝り倒していた。当のマナは頬を少しばかり朱に染め、黙り込んでいた。


 どうしたものかと困っていると、ようやくマナが話し掛けてきた。


 「テラは何故、あのような事を?」


 「うん?」


 テラは首を傾げる。


 そんな彼に、マナは言った。


 「私の事を魅力的だとか美しいとか言って、こんな何の取り柄もない・・・」


 「・・・マナはいちいち自己評価が低いな」


 まるで、自分を見ている様だ。テラはそう思ったが口には出さなかった。


 そして、マナの両肩をがっちりと掴み、しっかりと向き合った。


 「あの言葉は僕の本音だよ。マナがあの時何故あんな事を言ったのかは分からない。そして、僕も何故其処でああ言ったのかは分からないけど、少なくとも僕は間違いなくマナの事を魅力的な女性だと思っているよ」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 マナは顔が急激に熱くなっていくのを感じた。


 今までマナはここまで熱烈に美しいと言ってくれる人を知らなかった。


 家臣の中には、マナの事を綺麗だとか美しいとか言ってくれる人も居たが、何所か態度がよそよそしかった。


 当然だ。マナは一国の姫なのだ。


 これは一種の社交辞令という物だろう。もっと言えば、マナの事を姫君としか見ていないのだ。


 だが、テラは真っ直ぐにマナの事を見て、美しいと言ってくれた。


 思えば、この時からマナはテラの事を好きになっていたのだろう。






 「・・・・・・・・・」


 夕刻の高台でテラとマナは見詰め合う。


 マナの顔は夕暮れの空に負けない程に赤い。


 「初めて会ったあの日から、テラの事が好きでした。どうか私と付き合って下さい!」


 真っ直ぐにテラの顔を見詰めながら、マナは告白する。


 テラは黙り込んだまま口を開かない。それでも、マナはテラが答えてくれるのを只管に待つ。


 「僕は・・・」


 テラの口が、重々しく開く。若干、声が震えている気がする。


 「ごめんなさい」


 「っ!?」


 マナの目が大きく見開かれる。


 それは拒絶の言葉だった。


 その目から涙が溢れて来る。


 「テラは私の事が嫌いですか?」


 「そうじゃないんだ。只、僕とマナは一緒には生きられないんだ。・・・僕は不老不死だから」


 「・・・・・・・・・えっ?」


 マナは一瞬、意味が理解できずに放心する。


 不老不死―――


 決して老いず、決して死なない者の事。


 つまり、テラはソレなのだ。


 只、再生能力が高いだけではない。本当の意味で彼は死ねないのだ。


 「僕は神代の昔からずっと生きてきた。化け物と罵られ、誰もが僕を殺そうとした。それでも死ねずにずっと生き延びてきた。そんな僕がマナと一緒に生きられる筈がなかったんだ」


 テラの目はとても悲しそうだ。


 心の中では泣いているのかもしれない。


 「僕はこのままたった一人で生きていく運命なんだよ」


 「そんな事―――」


 マナが涙目で反論しようとした、その時―――


 「あははははははっ!なかなか面白い話をしているじゃないか」


 突然に聞こえた嘲る様な哄笑に二人はぎょっとする。


 其方を向くと、其処には色の抜けた白髪に薄紫の瞳をした女性が居た。


 「えっと、どなたでしょうか?」


 丁寧な口調だが、テラの瞳は警戒心に満ちている。


 それを察した女は名乗りを上げる。


 「私は黒魔術師のネロ。魔王アザトホート様の手下さ」


 「魔王!?」


 魔王の手下。その言葉にマナは一瞬で身構える。


 テラはそんなマナの前に出て、彼女を庇う様に立った。


 「テラ!?」


 「で?その魔王の手下が何の用かな?」


 もしもの時は自分が囮になってでも、マナを逃がす。


 テラはそう考えていた。


 そんなテラの姿にネロはくっくっと笑う。


 「なあに、危険な芽は今の内に摘んどこうと思ってね。そうだろう?神の子ミズホ」


 「っ!?」


 テラの背後で息を呑む音が聞こえる。


 どうやら、あのお告げを聞かれていたらしい。


 しかし―――


 「なら、どうやって僕を殺す?さっき言ったとおり、僕は死なないけど?」


 「肉体的には、だろう?なら、精神的にはどうだい?」


 「精神的?・・・っ!?」


 訝しげな表情の後、テラは目を見開く。


 その表情に、ネロは更に口角を吊り上げた。


 「思い出して貰うよ。そのトラウマの全てを」


 「やっ、やめろ・・・。やめてくれっ」


 テラの顔が恐怖に歪む。


 そのテラの額をネロの細い指が突いた。


 その瞬間、テラの脳内にこれまでの永い時の中で積み重ねられたトラウマの全てが嵐の如く蘇ってきた。


 「ぐっ、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


 「テラっ!!?」


 頭を抱え、絶叫するテラにマナが驚きの声を上げる。


 しかし、テラは只絶叫するばかりで、マナの声は届かない。


 やがて、ぷつんっと糸が切れた様に倒れた。


 「テラ!!」


 「さて、ものはついでだ。お前も始末しとこうか」


 そう言って、ネロはマナに手を伸ばす。


 マナはぎゅっと目を瞑る。


 ―っ、テラ!!―


 祈る様にネックレスを握りしめる。


 その瞬間、マナのネックレスが、眩いばかりの光を放った。


 「ぐあっ!?」


 ネロの手がその黄金の輝きに弾かれる。


 その手は酷い火傷を負っていた。ネックレスに宿った神力によってネロの攻撃が弾かれたのだ。


 「くっ、そのネックレス。よもや神具とは・・・」


 「テラ!マナ!」


 遠くから、アルフレッドとドラコの二人が近付いてくる。


 形勢が不利と悟ったネロは飛行の魔術で去って行った。


 「テラ!テラっ!!」


 マナが何度呼びかけてもテラは反応しない。


 その光景を見たアルフレッドがドラコに命令を下す。


 「ドラコ!テラを王城に運べ!早くっ!!」


 「はっ!!」


 その後、テラは急ぎ王城に運ばれるが、その日は結局目を覚まさなかった。

次回は番外です。

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