⒉小さな嘘
「今、君は死にたい?」
えっ、と固まった。
違う、違うよ。
そう言いたいのに言葉が出ない。
本当に僕は辛くない。好きなことがある。
なのに猫神様にそんなこと聞かれる――
嫌だ。
わからないから。
そうだよ。わからないから、しょうがないよね。
小さな嘘…ごめんなさい。
「え?なんで?」
にこっと笑って
「僕、死にたくなんかないよ!」
こんなに元気に話したのは久しぶりだ。
小さな嘘を重ねることも。演じることも。
全部、最低限にしてきたから。
「そっか」
猫神様は深く踏み込んでこなかった。
よかった、
そう思ってしまう自分がいることに少し腹が立った。
ガチャ
玄関が開く音がした。
まずい。
学校休んだのに起きてるのバレたくない。
知らない人を勝手に上げたのもバレたくない。
「猫神様、帰って…って」
気付けばもう居なかった。
「美菜~?」
階段下からお母さんの声がした
「ん…なに…?」
わざと寝起きの声をだした。
布団に静かに戻りながら。
「お母さん帰ったからね」
知ってるわ。
そう思いつつ再び寝たふりをした。
夜。
寝たふりをしていたはずなのに、気付けば本当に寝てしまっていた。
目を覚まして、お風呂に向かった。
僕は、自分の体が嫌いだ。
昔は女の子として「可愛いね」と言われるのがうれしかった。好きな男の子だっていた。
なのに、中学生になってから。なんでだろう。この体が嫌いになった。
スカートも履かなくなった。
まぁ考えていても今はどうしようもないことは、わかってる。
ため息をついて、お風呂に入った。
髪は短いから乾かすのが楽だ。普段は乾かさないが今日はなぜかやる気があった。
「お風呂空いたよ」
リビングにいる優真に伝えて、部屋に戻った。
やっぱり電気を消して、いざ寝ようとすると嫌なことばかり考える。
今日はいつもよりメンタルが弱かったのかな、、
気付けばベランダに立っていた。
辛いアピールがしたいのか。
学校に行きたくないのか。
休むための口実を作りたいのか。
それとも、本当に限界なのか。
無意識に四ツ葉も握っていた。
冷たい風が余計に不安を煽った。
すると――
ぶわぁっ、と強い風が吹いた。
恐る恐る顔を上げる。
「泣いてもいいんだよ」
僕の耳元で、猫神様は囁いた。
やめてくれよ。
もう嘘は付きたくないんだ。
体が…いや。
心が、限界だったのかもしれない。
僕は、小さな子供のように泣いた。
「おねぇちゃんなのにッ」
「がんばれてなぃのにッ」
「嘘つきなのにッ」
ぽつりぽつりと、泣きながら言葉が溢れていく。
大きな声で泣いた気がする。
それでも、お母さんは気付いていなかった。
僕は泣き疲れて、眠ってしまったらしい。猫神様がきっとベッドに寝かせてくれたのだ。
朝、起きると机には新しい四ツ葉が置かれていた。
初めて猫神様が本当にいい人なんだと思った。
四ツ葉を眺めながら、少しだけ微笑んだ。
今日は学校に遅刻したけど、ちゃんと行った。
このときは、調子が良かったのだろう。
ノートはいつもより真剣に書いた。
久しぶりに友達とたくさん話した。
すごく楽しくて、
「来てよかった」
そう思った。
六時間目は体育だった。
僕の学校の中で、一番怖い人。
人によって態度を変えるのだ。
委員会に入っている生徒には優しい。でも、僕には違った。
僕は学校に行けなかったり体育だけ休んだりすることが多かった。
だからだろう。
僕はものすごく嫌われていた。
「気にしすぎなんじゃないかな?」
他の先生にそう言われることもある。
でも、実際に態度が違う。
だから、言われるのがすごく嫌だった。
去年、持久走があった。
僕はしんどくてしゃがみこんだことがあった。ただ「止まるな」と叫ばれ恐怖でひたすら走った。
辛いのと恐怖で泣きそうだった。
終わった後も保健室に行かせてもらえず、端っこに座らせられていた。
そんな理不尽が何度もあった。
だから、何もなかった日でも、体育になると嫌な記憶が蘇ってくる。
ずっと休んでいて出せなかったノートがあった。
後から出せるような簡単なノートでもなかったから、出せずにいた。
そんなある日、久しぶりに先生に会った。
「ノートは?」
出せるわけない。
なのに、また嘘を付いてしまった。
「今週中に出します」
そう言ったら先生黙って離れていった。
でも、そのノートは数ヶ月経っても出せなかった。
言い訳かもしれない。
だけど僕にとっては、
「出さなかった」じゃなくて、
「出せなかった」。
もう話しかけること自体が怖かった。
六時間目が終わって、もうびっくりするくらいイライラしていた。
僕が話しかけたら「はぁ」ってすごい嫌そうにするくせに。
あの人には
「おう、どうした?」
とか言うくせに。
ずっと頭の中でぐちぐちと言っていた。
帰り道。
ぐちぐち言いすぎて、疲れた。
だから、
「もういいや」
と、あきらめた。
こんな時には考えもしなかっただろう。
もうすぐ僕が崩れ始めるなんて。
さぁ初小説、第二話!
どうだったでしょうか。
まだ続いていく物語!
ぜひ、楽しんでください!




