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いやぁ、やっぱすごいね。(俺以外。)
すっげぇ美人は建御名方様の奥様の八坂刀売神様だったわけで。
八坂刀売神様が持っていた刀で茂みから飛び出してきたゴブリンの群れを横なぎに一閃し、建御名方様が髪に飾っていた藤のつるで真っ二つになったゴブリンの体をひとつ残らずまとめ上げていた。
まあ、夫婦だからいいんじゃないかと思う。
ただ、ワンコロは不満だったみたいで
「必殺技のお名前言ってからだよ!
お名前言ってから必殺技を使うんだよ!」
って言っているし、
ロボ丸はロボ丸で納得いかないらしく、
「一網打尽にしてからの方が効率的なのでは……。」
ってぶつぶつ言っているし、
ロッテはロッテで感動して、
「ご夫婦で共同作業ってステキ!」
なんて言って胸の前で手を組んで頬を赤らめている。
山でゴブリンが大量発生したという依頼を受けたので討伐に来ているのだが、この分だとすぐに終わりそうだ。
ゴブリンは人型の魔獣なので木に登ったりもするため全方向に注意を向けなければならない面倒くさい奴等だ。
だが、この面子なら特に心配することもなさそうだ。
「では、次は私が参ります。
『蠅切り!』」
ロボ丸が上方向に素早く槍で突きを繰り出す。
すると急所を突かれたゴブリンたちがドサドサと大量に落ちてきた。
一、 二回突いただけに見えたのに何十体も落ちてきている。
さすがロボットなだけあって身体能力パネェっす。
「蠅って止めた方がいいのでは……。」
八坂刀売神様がつぶやいた言葉に皆がうなずく。
ロボ丸は、早いと掛けているので変えませんと言って誰とも目を合わせない。
本田なんとか様リスペクトだから譲れないらしい。
「じゃあ、次は……。」
ワンコロが建御名方様を見る。
建御名方様は首をブンブン振って
「私の必殺技でせっかくの刀が折れてしまっては申し訳ない。
今回は見送ることにさせてくれ!」
俺も刀を折られると悲しくなるからやめてほしい。
ワンコロに建御名方様の必殺技は今度にしようと提案する。
すると茂みの奥から普通個体の三倍の大きさのゴブリンが現れた。
おそらくゴブリンの群れのリーダーだろう。
大きさからしてキングゴブリンかもしれない。
ワンコロがスッと前に出た。
「じゃあ、次は僕!
『スーパーウルトラカッコイイ剣!』」
ワンコロがキングゴブリンの脳天から真っ逆さまに刀を振り下ろす。
きれいに二つに割れたはずのゴブリンが切られたことに気づいていないのか右手の棍棒を俺たちに向かって振り下ろした。
「『超カッコイイせんぷうきゃく!』」
ワンコロが蹴りでキングゴブリンの右半身を後ろに飛ばした。
いやぁ、ロッテは逃げられないかもと思ったから抱えられたけれど他まで気が回らなかった。
八坂刀売神様は建御名方様が守るように前に出られたみたいだった。
さすがししょー、咄嗟に奥様をお守りするとは夫の鏡だ。
記憶力の良いロボ丸が|おうちでおっしゃっていたものとは若干異なっていたと思いますとぶつぶつ抗議しているが、かわいいからどうでもいいと思うぞ。
怪我がないかロッテに確認した俺はロッテの肩に回した手を離して言った。
「大ボスは倒したみたいだが、ゴブリンの掃討が依頼の内容だ。
根絶するのが目的だから全部倒すぞ。」
ワンコロがわかったような顔をして、
「じゃあ、次はロッテ!」
えぇっ?!って驚きの表情を見せながらロッテがちょっとだけ前に出た。
恋のなんとかかんとかって言っていた記憶があるがゴブリンに恋される技なのかなんなのか。
わからんが温かく見守ってやろう。
ロッテが顔を赤らめながら両手のひらを前に突き出す。
「ええっと、
『愛のマジカルマジック!』」
えっ?必殺技の名前に恋ってついていなかったっけ?
と思った瞬間、ドドン!と大きな音がして地面が揺れた。
ロボ丸が討伐できなかったゴブリンが落ちてきたようだ。
十何体か落ちてきたゴブリンは意識を失ったのか麻痺したのか痙攣している。
もしかしたら今の魔法で山のゴブリンが全員痙攣したのかもしれない。
ロッテのことだからと俺はそう考えて山全体を探知する。
山の中の魔獣の気配はすべて痙攣しているようだ。
このままにしておくわけにはいかないので魔獣を対象にして地中深くに埋めていくことにした。
俺は両ひざと両手を地面につき、魔力を山全体に這わせる。
ケサランと杉玉が俺のやりたいことを察したのか両脇に並んで「お手伝いしますぞ」と言ってくれた。
俺はケサランと杉玉を見てニッコリ笑うと目を閉じて地中深くにゴブリンどもを埋めるイメージをする。
深く。深く。
俺の魔力にケサランと杉玉の魔力がきれいに混ざっていく。
深く。深く。
肩をポンっと叩かれた。
ゴブリンたちは消えていて目の前には建御名方様が俺の方に手を置いていた。
「おまえのやりたいことは既になった。
それ以上は魔力の無駄じゃ。」
後ろから八坂刀売神様の声が聞こえた。
「必殺技を使う時はお名前を先に言うんだってば!」
近くにいるはずなのに声が遠くで聞こえた気がした。
俺はごめんと言ったような言えなかったような。
俺は意識を手放した。




