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ワンコロは……、
ワンコロは……?
おうちのリビングのソファーに横になり、ごろごろしながらひとりワンコロは考える。
必殺技をみんなで考えても楽しくない。
なんだか気持ちが楽しくない。
カイは(仮)がいっぽうてきにお空のお星さまにしようとしたって言っていた。
ししょーのおくさまがいっぽうてきっていうのはひとつの方からだけっていうことって説明してくれた。
だから(仮)はカイをお空のお星さまにしようとしたけれど、
カイは(仮)をお空のお星さまにしようとしなかったってこと。
カイとお話出来なくなるのはさみしいし、
頭をなでてもらえなくなるのもさみしい。
だからカイがお空のお星さまになってほしくない。
ときどき人間とか動物とかいろんなものを爪とかで、えいってやると体の中からお星さまが出てきてお空にのぼっていく。
とってもきれいだからたくさんお星さまにしたことがあったけれど、もしかしたらとってもとっても悪いことだったのかもしれない。
もしかしたら(仮)はカイがお空のお星さまになったらお話出来なくなるのを知らなかったのかもしれない。
必殺技とかみんなでカッコイイお名前を考えるのがとっても楽しいことを知らなかったのかもしれない。
その後、みんなで一緒に食べるごはんがおいしいこと。
みんなで一緒にごはんを食べられなくなるのを知らなかったのかもしれない!
だって、みんなで一緒に食べるごはんってすごく楽しくておいしい!
きらいな野菜もちょっとだけおいしく食べられる。
ロッテの作ったこげこげの料理もロッテとふたりで食べたら楽しかった。
カイのおうちに来て、ロボ丸もごはんを食べられるようになったらもっと楽しくておいしくなった。
たぶん、(仮)はわかっていないんだ。
カイがお空のお星さまになっちゃうと、さみしくてかなしいのに。
僕はヒーローだから助けてって言われたら助けるけれど、
悪いことをしようとしていることを教えてあげるのもヒーローかもしれない!
(仮)に教えてあげなきゃ!
んんんっと。
(仮)って今どこにいるんだろ?
ロッテがたんちとかなんとか言っていたやつ使うといいのかな?
カイがこの前やっていたやつみたいにしてみればいいのかな?
なんとなく(仮)はどこだ!って、んんんってやってみる。
探すのは初めてだからむずかしい。
目をつぶって力をいれて。
んんんってすると目と目の間がぎゅぅーってなる。
……。
ぜんぜんわかんない。
そういえば、ロッテとロボ丸とで海を見た時に海がすこーし丸くって。
海ってちょっとだけ丸いんだねって言ったらロボ丸が褒めてくれたんだった。
ちきゅうって丸いから海も丸いんだって、よく観察してますねって褒めてくれたんだった。
ちきゅうって丸いからまるーく探せばいいのかな。
カイがこの前、ふかーくふかーくって言ってた必殺技は魔獣がふかーくもぐっていった。
僕がカイの必殺技をマネするならまるーくまるーくって呪文にすればいいのかな。
よし!
まるーく、まるーく。
あっ、ロボ丸がぶたの魔獣となにかしてる、今日のごはんかな?
あっ、ロッテがナーガの湖に向かって歩いている、カイにもらったの使わないのかな?
あっ、ナーガがいた、(仮)といる?
もしかしたらナーガがあぶないし、ロッテもあぶなくなる?
たいへん!ヒーローだから助けなきゃ!
ワンコロはカイにもらった召喚獣用のを使ってナーガのところに転移する。
ヒーローが悪いやつの前にサッと出てくるのはとってもカッコイイから僕のお気に入りだ!
僕の後ろにはナーガ、目の前には(仮)だ。
「(仮)はナーガをお空のお星さまにしちゃだめなの!
そんなことするなら二度と悪いことできないようにしちゃうからね!」
ヒーローらしくビシッと(仮)に指を指す!
(仮)がお口だけニィって笑う。
「ヒーローって感じでカッコイイよね。
そんな風になりたかったなぁ。」
(仮)はそう言うと悲しそうに目を閉じた。
褒めてくれたのがうれしいはずなのに胸がきゅーって苦しくなる。
なんで悲しいお顔をするの?
「ほんにすみません。
愛しているがゆえ、お許しもうします。」
後ろからナーガの声が聞こえて背中になにか押し付けられた。
背中からなにかに吸い込まれていく感じがして目の前がぐるぐる回りはじめた。
気が付いたらまるーい透き通ったなにかの中にいた。
透明な壁の向こうには大きなナーガと大きな(仮)と大きなロッテがいる。
もしかして僕が小さくなっちゃったの?
うぉんうぉんぼやけたお声で叫ぶロッテのお声が聞こえる。
大きな涙をながすナーガがぼやけたお声でお許しもうしますって何回も言ってるのが聞こえる。
それよりも、(仮)がロッテとナーガになにかするかもしれない。
ここから出ないと!
透明な壁をドンドンたたく。
爪でエイってする。
なんだかふにゃふにゃしていて割れてくれない。
魔法でエイってする。
魔法がぼわんぼわんしてこっちに向かってくるから消した。
出られない、かも。
ヒーローだったら刀でなんとかする。
刀を取り出して精神統一。
思いっきり振り下ろす。
ちょっとだけ手ごたえがあったのになんにもない。
あー、もしかしたら、もしかしてムリかもしれない。
ロッテとナーガを助けられないかもしれない。
なんだか力が抜けちゃってペタンとすわる。
いつもはなんとかできたのに。
ダメかもしれない。
心にぽっかり穴が空いたみたい。
ぼんやりと上を見上げたら(仮)と目が合った。
(仮)は目をつぶると、なにかぼそぼそ言って消えた。
よくわかんないけれどロッテとナーガは助かったみたい。
ほっ、とためいきをついた。
ナーガがこれからはあちきがお守りいたしんすってぼやんぼやんしたお声で言ったら、まわりが暗くなった。
ロッテがぼやんぼやんしているお声で叫んでいるみたいだけれどなにを言っているのかわからない。
お声が遠いしぼやんぼやんしているからよくわかんない。
よくわかんないけれど真っ暗だし、つかれたし、ちょっとだけ寝ることにした。




