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では本題に入る前に、と前置きして俺は秘匿義務があるからと魔術師じゃないヤツに席を外してもらった。
今、ここにはジェイコブ兄さんと助手のクロエ、俺とロッテとロボ丸だけだ。
それでは、とジェイコブ兄さんが今回の異常について説明してくれた。
壁の周りに異常があればすぐに分かるように結界を張っていること。
異常が報告されたところを見に行くとごっそり何かが無くなっていること。
そのため異常が現れた際にすぐに現場に向かうと空間が揺らいで目の前の藪がごっそり無くなったこと。
以上のことから謎の空間転移が起きていると魔術師協会に報告したという経緯をジェイコブ兄さんが説明してくれた。
空間転移の応用かと思ったが魔方陣は見られなかったらしい。
空間転移に関しては、現在魔方陣を使用するのが主流だ。
これは行き先を指定するためなのだが、開発当時は魔方陣を使用しない方法を探す輩も存在したらしい。
空間の揺らぎがあった場所はランダムだから、魔方陣を使用しない方法で転移魔法の練習をしているヤツが居るとも考えられるが。
「壁の中には魔術師は居ない。
元魔術師だったとしても、その知識を削除してから放り込んでいる。
そしてこんな酔狂なところに住んでいる魔術師は俺しかいない。
つまりはだ、おそらく自然現象なんだと思われる。」
とジェイコブ兄さんがまじめな顔で言った。
俺は、物知りなロボ丸にこういう現象があるか尋ねてみた。
「検索によりまして、何件か該当いたします。
地球がモザイク状になった時に空間が不安定になったため、一部地域で起こるようになった現象のようです。
この周辺では、今までその現象が発現した記録は無いようでございます。」
ただし記憶があるものが無くなる時に蓄積される知識のようですので人などが居ないこの地域での情報検索は難しいと思われます、とロボ丸がつけくわえた。
一瞬、ジェイコブ兄さんとクロエをこの世から……なんて過ったが、意味のないことなので言わないでおいた。
「おそらく所長がロボ丸の見解を聴きたいだけだと思うから、さっさと調査してレポート提出して終わりにしよう。」
と俺は提案した。
いままで黙っていたロッテが口を開く。
「でも、原因を突き止めないと。
そのうちクロエちゃんとジェイコブさんの|お家が無くなってしまうんじゃ……。」
俺は先ほどの恨みがあるので、別にいいじゃんなんて思ってしまうがロッテはやさしいな。
ジェイコブ兄さんが居なくなった時に俺にこの場所への移動を命じられたら困るので、何とかなるようだったらなんとかしようと付け加えた。




