36-1
目の前に、特定ヒューマノイド馬鹿と馬鹿ヒューマノイドが居る。
馬鹿と付けたくなる俺の気持ちは皆が理解してくれると思う。
ジェイコブ兄さんはクロエにデレデレして情けないし、クロエはクロエでポンコツぶりを発揮している。
今は、ジェイコブ兄さんの家の中。
客様にお茶をあげてくれと言ったジェイコブ兄さんの指示通り、お茶を準備したクロエが人数分のティーカップがないからと直接ティーポットから俺の口の中に熱々のお茶を入れようとした。
慌てた俺にジェイコブ兄さんが、
「胃の中に入るのは同じだからそういう方法でも大丈夫だよね!」
とクロエに感心している。
ブリティッシュジョークだったらもっと皮肉の効いたことを言うだろうから、本当に感心しているんだろう。
まったく質の悪い。
クロエは俺に謝りもせず、
「旧時代のアメリカ人は海に紅茶を投げ入れるのがマナーだが、新時代のイギリス人は紅茶を直接客人の口に投げ入れるのがマナーです。」
などと言っている。
どこで覚えたんだ、そのブリカスジョークは。
今日は、魔術師協会からの依頼でジェイコブ兄さんの家に集まっている。
ジェイコブ兄さんが壁の周辺で不可解な空間の揺らぎを見つけたということで、その調査に訪れた。
魔術師として心強いロボ丸と、
魔術師見習いとして経験値を増やした方がよいロッテと、
暇そうにしているなんちゃって召喚獣のワンコロと、
近くのユグドラシルの様子を見に行きたいケサランと杉玉と、
なぜか魔術師協会から来た調査依頼の音声メールが自動開封された時に現場に居合わせた(仮)が居る。
基本、魔術師はめんどくさがりが多いからメールが届いても開封しないヤツが多い。
そのため、魔術師協会から届くメールは基本的に自動開封の音声メールだ。
しかも、返信をするまで内容をエンドレスに繰り返す仕様付き。
このうるさい機能を解除させないようにご丁寧にもロックがかかっている。
それが俺とロボ丸目掛けてみんなで昼飯を食べている時に二つ同時に来たもんだからうるさいのなんのって。
マジで最悪な上に、(仮)がついて行きたいとか言い出してこれ以上なく最悪に。
最悪の上ってなんて言うんだろうと考えていたところに、クロエのこれだ。
もう、嫌な未来しか見えない。
両方の掌を合わせて塩を精製する。
俺は誰にも見られないように精製した塩を自分の両肩にふりかけて、気持ちだけ厄落としをした。
多分、それをケサランが見ていたんだろう。
誰にも見えないように金色の粉が俺の足元に降りかかっていた。
なんの支援魔法かわからんが同情してくれたんだろう。
俺はケサランに向かって口だけ動かして「あ・り・が・と・な」と伝える。
ケサランは分かってくれたようで身体を大きくさせてくれた。




