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本多忠勝様の槍の動きをダウンロード、インストール。
槍を両手で持つ。
左肩を前に横を向き両足を1メートルほどに開き構え、実際に身体を動かしてみる。
継足で前に進み、突く。
忠勝様の槍は守るためのものではなく、攻める槍だ。
槍の長さも重さもほぼ同じになっているはずなのに、何かが違う気がする。
忠勝様の蜻蛉切は笹穂槍、蜻蛉が飛んできて穂先に止まった途端二つに切れてしまったとも、飛んでいる蜻蛉を槍で斬り落としたとも云われる曰く付きの槍。
それほどまでに切れ味が良い。
しかし、蜻蛉切とまではいかないのかもしれないが私の槍も十分業物だ。
ではやはり、私自身が足りないということだろうと予測を立てる。
槍を動かしているうちに何か分かるかもしれないと、とにかく動かしてみる。
本多忠勝様の蜻蛉切は通常4メートル程の長さの槍だ。
ここぞという時は6メートル程の長さの柄に変えていたと伝えられているため、私も同じく6メートル程に調節してある。
騎乗しながら扱うのは難しいが、魔力で力を補っているからその点は大丈夫なはず。
庭のリンゴの樹に下げた銭の穴に向かい何度も突きを繰り返す。
槍の石突は小さな的へ螺旋状に吸い込まれるように向かっていく。
風向きなどを計算して放っているため正確に的に当たる、しかし何か違う気がする。
「面白い修行だね。」
背後から声が聞こえた。
振り返ると、(仮)様が立っていた。
最近は、以前と比較してバランスの悪さを少々改善されたようだ。
「槍術の達人たちは、紐でぶら下げた古銭の穴を的にして石突で突く練習をしていたそうです。
それに習い、修行をしています。」
私は丁寧に答えた。
口元だけ笑みを浮かべ、へぇーっと言いながら(仮)様がこちらに歩み寄った。
動きは相変わらずぎこちないがやはり改善されたようだ。
初めてお会いした時は、|パーキンソン病かと推測したが改善されているため違ったようだ。
「それだけ柄が長いと的に当てるのも苦労するだろうに、しっかりと銭の穴の中に入っていたね。
長い方が相手との間合いが広くなって有利だけれど、扱いが難しくなると思っていた。
それだけ扱えるならば、鎌槍の方が合っているんじゃないかな?」
分かっている。分かっているが、
「本多忠勝様という槍の名手が笹穂槍を使用されていますので、私もそちらに習い笹穂槍を使用しております。」
と返答する。
笹穂槍は突くことによって威力を発揮する。
戦場では切りつけた時に付着する脂によって刃の切れ味が悪くなるが、突きは切れ味が関係しない。
いくらでも突くことができる。
更に笹穂槍の場合、突いた時に傷口が大きくなるため致命傷になりやすい。
笹穂槍は本多忠勝様に相応しい攻撃特化の槍なのだ。
「へぇー、その人は聞いたことが無いけれど君が言うくらいだから素晴らしい人なんだね。」
だって君は頭脳派でしょ? と(仮)様が仰った。
「聞いた限りだと、守りを捨てるただの狂戦士だ。」
(仮)様の言葉に、論理的思考を持ち合わせているはずの私の頭脳が暴走する。
「本多忠勝様は狂戦士ではありません。
知略にも長ける武将でございます。
小田原攻めのお話を今は割愛いたしますが、戦うお姿は熱く猛々しく、知略を尽くして策を練り、忠義のお心をもつ礼儀正しいお方でございます。
今ここで認識を改めていただきたい。」
これが怒りというものなのだろうか、私は表情を作ることを忘れていたことに気がつく。
(仮)様が瞳も口元も合わせて笑みを浮かべられた。
「ごめん、ごめん、怒らないでよ。
ロボ丸君が自分のスタイルと違う方向を目指しているのかと思ってね。
アドバイスをしたくなっただけなんだ。
ほんだただかつ?様だっけ。
とても思い入れのある人なんだね。」
その戦闘スタイル嫌いじゃないから真似しようかなー、と(仮)様が仰る。
その前に御自身のご病気を快癒されたほうがよろしいのでは、とアドバイスをした。
「それもそうだね。
今からリハビリに専念するよ。」
じゃあ、と仰って(仮)様は立ち去られた。
人間というのは、自分にないものを望むという。
熱く猛々しいお姿に憧れることが出来るから、いつか私も人間になれるかもしれない。




