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「それで、ロッテちゃんはどうしたんでありんすか?」
ナーガちゃんが聴いてくる。
私はナーガちゃんととっても仲良くなって、今ではお互いを「ちゃん」づけで呼び合う仲。
今は大きな湖の湖畔の岩に二人で並んで座って綺麗な湖水に両足を浸している。
私は湖面をチャプチャプ両足で揺らしながら、ワンコロが私のお顔にチャーシューを飛ばしてべったり張り付いた時のお話をする。
「お箸が上手く握れないからだよってフォークをおすすめしたの。
そしたら、ワンコロが意地になっちゃってね。
僕だってできるもん!って頑張ってラーメンを食べるもんだから、メンマがカイさんの頭に乗っちゃって。
麺もスープに落ちる度にあちこちにスープが飛んじゃって!
なのにロボ丸はケサランちゃんを誘導して綺麗に避けるからケサランちゃんが茶色になっちゃって!
それを見た杉ちゃんがケサランちゃんの真似をしてテーブルの上に飛んだスープを綺麗に吸うからワンコロはいろんなところを汚していることに気が付かないみたいでね。
結局綺麗に食べられていると思っているみたいで、そのままお顔をスープでベタベタにしながら食べてたの。
すごくかわいくって写真撮っちゃった!」
とナーガちゃんにスープでベタベタになったワンコロの写真を渡す。
ナーガちゃんは、今、私たちのおうちへの出入りを控えている。
ナーガちゃんがおうちに来ると、カイさんの動きがカクカクロボットみたいになるし、ワンコロも元気がちょっとだけなくなるみたい。
ナーガちゃんが行きにくうござりんす、と悲しい笑顔で笑っていた。
二人とも、ナーガちゃんが美人さんでグラマラスな身体をしているから緊張しているだけだと思う。
こんな素敵なナーガちゃんを好きにならない人はいないと思う。
だからカイさんがナーガちゃんを好きだったとしても。
でも、私はナーガちゃんの親友だからナーガちゃんを応援したい。
「私、ナーガちゃんのことお友達って思ってもいいかな?」
恥ずかしくて顔を伏せてしまう。
顔の周りが熱くなっているのを感じる。
私はナーガちゃんを親友だと思っているけれど、ナーガちゃんは神様だからお友達とも思っていないかもしれない。
そっとやさしく肩に触れられた。
そのまま身体がナーガちゃんに引き寄せられる。
私はすっぽりとナーガちゃんの腕の中に収まっていた。
「もちろんでありんす。
親友と思ってやすよ。」
自然と笑みがこぼれてくる。
ほっとしたような、心が弾むような、胸がきゅぅっとなるような、そんな感じがした。
私はもぞもぞと身体を動かし、ナーガちゃんの身体をそっとやさしく抱きしめ返す。
「じゃあ、大親友には今度ワンコロの刀を振るカッコいい写真を撮ってくるね!」
動きが早すぎて写真に収められないって言っていたじゃないでありんすよ、とコロコロと笑う声が頭の上で聴こえる。
ナーガちゃんのしっとり冷たい肌が火照った身体に気持ちいい。
このまま二人でずっと笑っていたいなぁ。
「そうだ、カイさんから会いたい人に会えるペンダント。」
と私はポーチからペンダントを取り出した。
ケサランちゃんと杉ちゃんを召喚獣だと思わせるためのペンダントだ。
これを持っている人は召喚獣を呼び出せるっていうことになっているペンダント。
でも、本当は会いたいときに会いに行けるし困ったときに呼び出せるペンダントだ。
使い方は繊細だからカイさんとたくさん練習した。
「会いたい人を思い浮かべながら呪文を唱えるのがコツなの。
私がナーガちゃんのこと好きだから、会いたいときに会えるようにってカイさんがくれたの。
ナーガちゃんも会いたいときに会いたい人に会えますように、ってカイさんが。」
ワンコロも持っているよ、とペンダントをナーガちゃんの首にかける。
「好きな人とおそろいってうれしいね。」
って言いながらナーガちゃんの瞳をのぞき込む。
ナーガちゃんの瞳が揺れる。涙が溢れ出てきて今にもこぼれそうだ。
ナーガちゃんは胸のペンダントをギュッと握ると瞳も一緒にギュッと閉じた。
綺麗な涙がこぼれちゃう、私は思わず涙に手を伸ばした。
掌に落ちた涙は透明なしずく型の結晶になった。
ごめんなさい。これ返すね、とナーガちゃんに返そうとしたら結晶ごと掌を包んでくれた。
「あちきは旧時代では神様でありんした。
今でもその力があるのありんしたら、きっと神様も心を動かす力が宿っていると思いんす。
それはロッテちゃんが持っていておくんなまし。」
今なら恋愛成就の神様にもなれる気がしんす、とナーガちゃんが笑う。
私も笑う。
キラキラと揺れる湖面。
木漏れ日が穏やかな午後。




