18-1
ワンコロは人間になりたい。
さっき、ししょーに剣のお手本を見せてもらった。
さやっていうのから刀をシュッっと出したらスパァンと岩が切れていた。
むかし、切られたことがあったのはもしかしたらこれだったのかもしれない。
きれいに切れたからすぐにくっつけられた。
たいしたことないって思っていたけれど今はわかる。
だって僕にはできない。
さやから刀を出すときにさやを持つお手々が必要だ。
いままで人間になりたいって思ったことがなかった。
だってよわそうだしよわい。
毛皮がかたくないからすぐに傷つくし、足が2つしかないからおそいし。
わるいところがたくさんあると思っていた。
でも、よわいから変身できるし剣ももてる。
よわいから強くなれる!
だからみんな人間のふりをしていたんだ。
むかしはお友達がいなかったから聞かなかった。
ちょっとむねがキュゥってなった。
今はみんながいるからだいじょうぶ。
お友達もいるしすぐにお友達ができる。
いやな気もちはとおいお空にほおって今は人間になることをかんがえよう。
ん?
人間ってどうやってなるのかなぁ。
ししょーはむかしから人間だし、蛇女のことは思い出したくない。(せなかがさむくなるから)
人ってどんなかたちだっけ。
お手々が二つ、足が二つ。僕も前の足が二つ、後ろの足が二つ。
う~ん。
う~ん。
なんか変わった気がするけれど、全然変わってない。
人間ってむずかしい。
あたまはどんなだっけ?
お目々が二つ、お鼻が一つ、お口が一つ。僕もお目々が二つ、お鼻が一つ、お口が一つ。
う~ん。
う~ん。
ちがいがわかんないから人間のかたちがわかんない。
だってみんなおなじだしみんなちょっとずつちがう。
ししょーもカイもお目々が二つ。
ちょっとちがうのは……まゆげがししょーのほうがふとい!
そういえば、僕にはまゆげなかったかも!
う~ん。
まゆげができた!
この調子で人間のかたちになるぞ。
う~ん。
う~ん。
う~ん?
カイとししょーが僕をみて、わらうのをガマンしているお顔をしている。
うまくできなくってからだをひねったり足をバタバタしていたからかなぁ。
カイは僕がうんうんやっていると、いつもお目々を大きくする。
お目々を大きくするときはめちゃくちゃびっくりするときだ。
うんうんしてない時でニコニコの時はめちゃくちゃほめてくれる。
今はニコニコとちょっとちがうけれどほめてくれるのかもしれない。
それよりもいまは人間のかたちだ。
う~ん。
う~ん。
ん?
こんなかんじかも!
こうやって、ああやって、えいっ!
「できた!」
カイとししょーに変身した僕をみせてあげた。
カイは僕の頭をなでながら
「すっごくかわいいぞ!」
とほめてくれた。
ししょーは
「人間に興味を持ったのだな。
お前が何かに興味を持つなんて成長したな。」
とほめてくれた。
二人にほめてもらえるのがすっごくうれしくてしっぽが勝手にふさふさゆれてしまう。
しっぽ?
あれ?
人間ってしっぽあったかなぁ?
ししょーが鏡をみせてくれた。
そこには毛むくじゃらのオオカミおとこがいた……。
肉球がじゃまで刀はもてなかった……。
「てのひらに魔力を集中させたらくっつくよ。」
ってカイは教えてくれたけれど、それだとししょーの居合抜きってやつがうまくできなかった。
なんだかすごくしょんぼりでむねがキュゥってなって、なみだが出そうだった。
ししょーは
「誰でも出来ないことはある。
なんでも出来るものはどこにもいない。
そして、出来ないことを出来るようにするために努力ができる者が強くなれる者だ。」
って教えてくれた。
おまえは今より強くなってしまうな、って大笑いしながら。




