17-1
目を開けると、そこには真っ白な空間が広がっていた。
ここ…は?
ここは…どこ?
なん…で…こんな…とこ
あぁ…かれ…をさがし
そうだ…ここには…だれ…も…いな…い
かれを…さがさ…ないと
ちが…う、かれの…いない…ここから…でない…と…
かれ…かれ?
「ゆかりの髪は紫色、すごく素敵な色だよね。」
彼はそう言って私の髪を右手に取り、そっと口づけする。
恥ずかしいから止めて欲しい。
髪を褒めてくれるのは嬉しい。
だって彼に好きになってもらうために染めているのだから。
でも、彼のために染めているとは絶対言わない。
私が私を好きだから私の色を纏っているという理由にしてある。
いや、最初は自分を受け入れたくて自分の色にしてみた。
それを彼が気に入っただけだ。
そう、私の嫌いな私も好きになってくれた気がしただけだ。
話題を変えたくて彼に問いかける。
「今日はどこに行く?
特に行きたいところがなかったら行きたいところがあるんだけれど。」
いつも微笑んでいる彼がにこりと笑う。
彼はいつも私を否定しない、了承の合図だ。
私が間違った方向に向かいそうな時は、それとなく留意してくれる。
それでも私が意見を曲げない時も、最善の方法を考えて同じ方向に進んでくれる。
私の行動が常に善意に因るものなのが分かっているからと言うが決してそうではない。
彼がただ優しくてどんな時でもなんとかできる才能を持っているからできることなのだと考えている。
そんな彼に計画の一部を話す。
元アナトリア高原だったところにズルタナイトという宝石を探しに行きたいと。
世界が混ざってしまってからどこにどこがあるのかよくわからなくなってしまった。
情報が分断されてしまったため、昔の世界地図と対応しているものが現在はない。
ズルタナイトは旧時代でも希少な鉱物で、トルコのアナトリア高原にある鉱脈でしか取れなかった。
今はどこにあるのかわからない、そのたった一つの鉱脈を探したいのだ。
「人工のダイアスポアは今も昔も出回っているけれど、本物は旧時代のものしかないからね。
僕も本物を見てみたいな。
噂では僕とゆかりの色になるんだろ。」
彼は右腕が薄っすらと黄緑色をしている。
まるでどこかにぶつけた痣のようだ。
だが、偶然ぶつけた痣ではないことが広範囲に広がる黄緑色から分かる。
初めて見たときは、虐待か暴力を受けているのかと勘違いしてしまった。
犯人のいない暴力に泣いてしまった私を見てすまなそうに謝る彼を今でも覚えている。
あれ以外、彼が微笑んでいないところを見たことがない。
私の名前は、ゆかり。
縁を大事にし、情熱も冷静も併せ持つ子に育って欲しいという母の願いが込められているそうだ。
そんな彼の色である黄緑色と私の色である紫色の石を持ちたいと思っていることが彼に伝わってしまったことが恥ずかしく、顔に血が上る。
誤魔化すように、無言で集中しているふりをして地面に転移用の魔方陣を木の棒で描き込む。
まだ回線がうまくつなぎ合わされていないインターネットの情報を元に昨晩当たりを絞った場所へ転移するように座標を描き込んで完成だ。
「ゆかりは頭がいいからなんでもできるよね。」
本当にすごい、とにこにこ笑顔で彼がうなずいている。
私はすごくない、すごいのは彼だ。
彼は私がなんともできなくなって困っていることを、いつもあっという間に笑顔で解決してくれる。
本当の意味で頭が良くてなんでもできるのは彼の方だ。




