13-1
目の前にナーガがいる。
「お帰り下さい。」
やばいやつがワンコロと供に店の中に入ってきた。
ワンコロはいつも変な…いや、変わった…いや、すごいやつを連れてくる。
とにかく、神様であるナーガと再び相まみえるだなんて由々しき事態だ。
神様を怒らせるととんでもないことになるのは目に見えている。
「蛇女はワンコロの大活躍をおはなししてもらうから呼んだの。
おはなししたら帰るの。」
ワンコロがしっぽを振りながらキュンキュン言いながら俺を説得する。
ワンコロよ、この美人は神様なんだぞ。美人に騙されるなと言ってやりたい。(怖くて言えない。)
「ワンコロ様が、あちきを救ってくだすったお話しをしとうござりんす。
それ以外になにかすることはありんせん。」
とナーガが言う。
私ワンコロ様の御活躍を伺いたいんですけれどもとロボ丸はノリノリだ。
ロッテも美人を助けてあげるだなんてワンコロはカイさんみたいにかっこいいねなんて言っている。
悩む。
ナーガを怒らせるわけにはいかない。
ワンコロの活躍を話したら帰るらしいし、皆も聴きたいらしいし、ここはひとまず話を聴くことにしよう。
「ワンコロ様はとてもお強くとてもお優しくありんした。
ワンコロ様がお二人をご心配なすってあちきのところに来られたのでありんした。
そのお優しさに弱いあちきは縋ったのでありんす。
ガルーダという傍若ものがあちきを追いかけまわしていることに疲れたあちきはワンコロ様にお願いをしたのでありんす。
只々あちきに近づかないように説得してほしいでありんすと。
それをワンコロ様は身体を張ってあちきを守ってくださり、
そしてガルーダを遥か遠くに遠ざけてくだすったのでありんした。」
ナーガが身振り手振りでどれだけ強かったのか格好良かったのかと説明する。
「ヒーローみたいだったっていうの忘れてる!」
ワンコロが付け足す。
おまえ神様に向かって話を遮るな!
「そうでありんす。
あの時のワンコロ様はヒーローでござりんした、あちきの。」
ナーガが頬を染める。
ワンコロが満足そうにうんうん頷く。
えっ?!ワンコロはナーガが好きなのか?
見た目の生物学的には合わないけれど精霊界では異形種交流は当たり前なの?
よくわからんが、相手は神様だからな。
精霊界では無理だったとしても片方が神様だったら大丈夫なのかもしれん。
っていうか神様はどの界に属するんだ?
思い出した!という感じで更にワンコロがナーガに要求する。
「ワンコロがカッコよく変身したお話し忘れてる!」
美しく微笑んだナーガがワンコロが大きく本来の姿に変身してガルーダをぶっ飛ばした話をする。
あれ?そういえばガルーダって神様のガルーダか?
本来って狼くらいの大きさだろ。
そんな小さいワンコロが神様をぶっ飛ばすとは胸熱だったかもしれん。
だが本気でイカレてる。
相手が神様と知らなかったらぶっ飛ばせるのかもしれない。
いや、知っていたとしても愛の力でぶっ飛ばしたのかもしれない。
ちょっと目頭が熱くなってきた。
こっそり目から出た水を袖で拭きながらロッテとロボ丸を見る。
ロッテは頬を赤くしながら興奮してナーガにいろいろ聴いている。
女子は恋バナが好きだからな。
かわいい。
ロボ丸は私が計算した数値によりますと、
とワンコロが変身した状態での腕を振る角度やガルーダの大きさなどから算出したらしい飛距離と実際の飛距離との相違について、他にどのような影響が考えられるかなどを聴いていた。
おまえだけちょっと違うぞ。
なぜかケサランが震えている。
心配になって抱きしめてやった。
ナーガがお礼にと鱗を懐から取り出す。
「ワンコロ様にはお礼はいりんせんと言われんしたが
あちきの気持ちを受け取ってほしいんでありんす。」
と鱗をワンコロに手渡そうとする。
「ワンコロいらない。」
あー、その鱗弄ってみたかったんだよなぁ。
「その鱗、俺に預けてくれないか?
ロッテの作った俺のバングルを羨ましがっていたじゃないか。
俺がかっこいいやつ作ってやるよ、ヒーローに似合いそうな。」
ヒーローにこだわっているみたいだし変身ベルトっぽい首輪を作ってやろう。
構想が捗る!
えっ?!ヒーロー?!とワンコロのしっぽがブンブン振れる。
私も欲しいのにとロボ丸が悔しそうにハンカチを噛む。
ロボ丸は小道具を使って小ネタをするようになってきた。
どこのテンプレだ。
「この鱗はあの人さんには渡しんせん。
大体、ワンコロ様とはどういった関係でありんす?」
ナーガがプリプリ怒っている。
ロボ丸に鱗。
変身セットをロボ丸にも作って二号なんとかっていうのも良いかもしれんな。
俺は慎重に言葉を紡ぐ。
「ロボ丸はワンコロ(とロッテ)が作ったロボットだ。
いわばワンコロの子供みたいなもんだな。」
ナーガがハッと息を呑む。
「そうでありんすか。
ワンコロ様のお子様というならば、あちきの子供。
ようござりんす。
あちきの鱗をどうぞ使うておくんなし。」
そしてこちらも、と金色の羽を渡してくれた。
どうやらガルーダが落とした尾羽らしい。
「あちきはあちきを守ってくだりんしたワンコロ様のお心を
あちきの子供にも受け継ぎとうござりんす。」
ロボ丸が二人の子供かぁ。などと感慨深く思っているとナーガがロボ丸に近づき、その顔に触れた。
ナーガの触れている顔が一瞬青く虹色に輝く。
ナーガが顔から手を離した。
ロボ丸の目が青くそして薄っすらと虹色に輝いていた。
さすが神様、物理で自分の子供にしてきたな。
ケサランが更に震える。
ケサランとナーガはもしかしたら相性が悪いのかもしれん。
早急にお帰りいただかねば。(もらうものはもらったし。)
「ワンコロがヒーローみたいに大活躍をした話をたくさん聴いたことだし、そろそろナーガ様にはお帰りいただいてもいいんじゃないか?
ケサランの具合が悪そうだ、静かにして様子をみたい。」
俺はワンコロにナーガ様にお帰りいただくよう促す。
ちょっと言葉が露骨すぎたかな。
「それは大変なの。
ケサランが心配だから蛇女は帰ってほしいの。」
ワンコロよ、さっきから気になっていたが神様に向かって蛇女呼ばわりはいかんぞ。ナーガ様と言え。
「あちきの名前は蛇女ではありんせん。
ナーガと呼んでおくんなし。」
小さな声でこっそりワンコロに伝えたのが聞こえていたのかもしれん。
蛇って地獄耳なのな。
「蛇女帰って?」
ワンコロ強いな。
ケサランが腕の中でもふもふしてる。
やっぱり不調はナーガが原因みたいだ。
「ナーガ。」
ナーガが低い声でワンコロに圧を掛ける。
さすがのワンコロも空気が読めたらしい。
ブルりと震えると、
「ナーガ帰って。」
と言い直した。
ナーガはすらりと姿勢を正して綺麗に深々とお辞儀をした。
「お世話になりんした。
このお礼は必ずや返しにきんす。」
ナーガは店から去っていった。
ケサランは俺の腕から飛び出すと、ロボ丸に向かって行った。
ふぁさふぁさしながらロボ丸に金色の粉?を振りかけている。
消毒かなんかをしているつもりなのかもしれん。微笑ましい。
俺はホッと一息ついた。




