12-3
なんでワンコロはこんなところにいるんだろう……。
湖のところの草ぼうぼうの近く、金ぴか鳥男の前に蛇女といる。
帰りたいなぁ。
事前の打ち合わせってやつのとおりにセリフを言ったら帰ろうかなぁ。
「ガルーダはナーガのこと追いかけちゃだめなの。」
これでよし、と帰ろうとすると金ぴか野郎が超えらそうに言ってきた。
「そんなちびっこいわんころのくせに威勢がいいじゃないか。
俺様のナーガちゃんが大事らしいが、弱い男はナーガちゃんにふさわしくないんだよ!」
本当のワンコロはちびっこくなんかないし、
そもそもおまえに大好きで大事な名前を呼び捨てにされたくない!
ぐわぁっと大きな唸り声をあげて本当の大きさに戻る。
あ、ムカつくからもうちょっと大きく、二階建てバスぐらいの大きさになってやった。
「震えて眠れ」
決まった、決め台詞。
金ぴか野郎が震えてる。
「…フェンリル様とは露知らず、わんころなどと言い大変申し訳ありませんでした…。」
金ぴか野郎が、ひざと手を土につけてあたまをさげる。
ワンコロは勉強したから知っている。
悪いやつが負けをみとめたときにする謝罪のスタイル、土下座っていうやつだ。
ワンコロはヒーローだ。
敵になさけってやつをかけてあげるのがヒーローだから許してやろうかななんて思っていたら、そのままの形でずりずりと金ぴか野郎が近づいてくる。
その動き気持ち悪い!
ぶるぶると震えてしまった。
「ナーガにもう近づかないで。ワンコロにも。」
立っているだけで気持ち悪いのに動くともっと気持ち悪い。
ワンコロにも近づかないでほしい。
それなのに金ぴか野郎は気持ち悪い動きでワンコロに近づいてくる。
「もちろんですよ、フェンリル様!」
あまりの気持ち悪さに思わず手が出てしまった。
金ぴか野郎が近づく前に右腕をぶぅんと振ったら草ぼうぼうの中に飛んでいった。
良かった。
そんなに力が入っていないのに湖まで飛んでいったなぁ。
わざとらしく飛んでいった金ぴか野郎が身体中傷だらけになって戻ってきた。
「相変わらずお力がお強くて全く敵いそうもありません。」
傷だらけになっているからもっと気持ち悪い。
いろんな液体がいろんなところから出ている。汚い。
近づかないでともう一回金ぴか野郎をぶっ飛ばす。
今度はちょっとだけ本気で左腕を振った。
本気の本気で右腕を振ったらあいつ、お空のお星さまになっちゃうからな。
ワンコロはヒーローだから敵になさけってやつをかけてあげるのだ。
金ぴか野郎は空飛ぶお星さまみたいにぴゅーって飛んでいった。
たぶん本物のお空のお星さまにはなってないと思う。
あっ!技のお名前を言うの忘れた。
カッコいいお名前なんにしよう。
「主様、ほんに助けていただきありがとうございんした。
主様をワンコロ様とお名前で呼んでもよろしゅうござりんすか?」
ワンコロはワンコロだからお名前呼んでもいいよと蛇女に伝える。
そういえばヒーローは『名乗るほどのものではないので』って言って立ち去るのがセオリーってやつだった。失敗した。わすれてた。
あぁ、また金ぴか野郎が近づいてきた。
「私もフェンリル様をお名前で呼んでもよろしいで…」
最後まで言わせない!
右腕をぶぅんって振って金ぴか野郎をお空のお星さまにならない程度に遠くへ飛ばす。
「名乗るほどのものではないので!」
決まった。
あいつには絶対呼ばれたくないのだ。
蛇女がワンコロのそばに来た。
「ほんにありがとうございんした。
小さいお姿で世を忍んでやしたのに、
あちきのためにまことの姿にもどってくださいんした。
お礼にあちきの鱗を持っておくんなし。
これで指輪を作っておくんなし。
そして二人の縁を深めんしょう。」
って鱗を渡してきた。
そうだった、みんなの前じゃないけれど本当の姿に変身して蛇女を悪い敵から救ったんだった!
そんな鱗なんていらないからみんなの前でワンコロのカッコよかったお話してってお願いした。
「もちろん良うござりんす。」
蛇女がにっこり笑った。
蛇女いいやつなのだ。
ワンコロはこれからみんなのところに蛇女を連れて行くのだ!




