10-2
ロボ丸はお店でお留守番。
私たちは湖に付与魔法付ゴーグルの試用をしに来た。
結構大きな湖で透き通る水がとてもきれいで波打っていた。
カイさんが水際にある人の丈くらいの大きさの岩にひょいっと飛び乗る。
魔法を使ったのかな?
「手。」
カイさんは私の方に向き直ると手を差し伸べた。
私はカイさんの手を取って岩に登る。
多分カイさんが魔法をかけてくれたから簡単に登ることができた。
「思ったより狭いがちょっとだけ我慢だ。ゴーグルを掛けたらしっかりつかまっていろ。
今から実験をする!」
ゴーグルを目に掛けて恐る恐るカイさんの腰に手を回す。
いいのかな?とカイさんの顔を仰ぎ見る。
にやりと笑ったカイさんは私の肩を軽く抱いて自分にだけ付与魔法をかける。
「絶対大丈夫のはずだが何かあったら責任はとる。」
と言ってカイさんが対岸の葦の茂みに風魔法を放つ。
すると、鳥の大群がこちらに向かってきた!
かなり大きな鳥は魔鳥だろう、砂塵を纏った風を集団で放ってくる。
カイさんが「効かぬわ!」と高笑いしている。
風魔法が効かないことが分かったのだろう、魔鳥はこちらに向かって石やフンを落としてきた。
「クソドリが!そんなもの二度と通用するか!」
対策はバッチリなのだよ!とカイさんの高笑いが止まらない。
以前に戦ったことがあるから余裕なのかもと私はカイさんの腕の中で安心した。
ほっと一息ついてしばらく様子をみていたら黒い雨雲が現れてぽつぽつ雨が降ってきた。
雨脚がどんどん強くなったころ、ザバッと湖の中から七つの頭を持った大きな蛇が出てきた。
「ナーガだ。」
カイさんがぼそっとつぶやいた。
湖の水と雨粒を巻き込んだ嵐が魔鳥たちをのんでいく。
「騒ぎすぎて湖の主を起こしちまったみたいだ。」
やばいと言いながらカイさんがナーガに拘束魔法を丁寧に複雑に何重にもかけた。
拘束魔法で縛られたナーガが逃れようと鱗をギチギチと鳴らしながら悶える。
拘束魔法から逃れられないとわかったのだろう、ナーガは動きを止めた。
嵐はいつの間にか止んでいる。
動きの止まったナーガの体が溶けてきた。
「人の形?」
ナーガは女性の形になった。
「解いておくんなし。
私はなんもしとりゃせぬ。
悪いのはあちらさんでありんす。」
美しいナーガの瞳から涙が流れた。
すっごく切ないよ。こんなきれいなお姉さんが泣いちゃった。
「カイさん。ナーガさんは悪くないし、実験は成功だから拘束外してあげて。
こんなにきれいな人が泣いちゃうくらい辛いんだもん。
かわいそうだよ。」
俺たちが逃げるまでは拘束は解けない、とカイさんが首を縦に振ってくれない。
ロッテが危険になるからとどうしても拘束を解いてくれない。
きっと痛い、涙が出そうなのを堪えてカイさんを説得する。
カイさんが守ってくれるから大丈夫って説得する。
「わかった」と言ってカイさんが渋々ナーガの拘束を解いた。
ナーガは何もしんせんよと湖面を滑るようにこちらに近づいてきた。
私の前に立つと私の手を取り
「主さんは優しい子え。
ほんにありがとうございんした。」
と何かを握らせて、ナーガはそのまま湖の中に沈んでいった。
「とんだ災難だったな。」
ぼそりとカイさんがつぶやいた。
私たちはどちらからともなくそのまま湖を後にした。
私の掌はぐっと握られたままだった。




