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ジェイコブ兄さんもようやく目が覚めた。
今は皆でロボ丸とクロエの作った、油・タンパク質・炭水化物の三拍子がそろった英国式ブレックファーストをいただいている。
さすが俺の嫁と言ってうまいうまいと山のようにベイクドビーンズを乗せたトーストを食べているジェイコブ兄さんに、その嫁が二日酔いで催している吐き気を更に加速させようとしたことを賢い俺は言わない。
それよりも、変わった女性ばかりが寄ってくるというジェイコブ兄さんの女運の悪さがヒューマノイドにも影響することに戦慄する。
ジェイコブ兄さんは悪い人ではないのになぜかいつも変わった女性と付き合ってしまい、未だに結婚まで至ったことがない。
こんな僻地に赴任させられているのも魔女の占いで一生独身と出たからだ。
確かにヒューマノイドとは結婚できる法律がこの世界にはまだないからな、と占いの正確さに感心する。
クロエはさわやかな雰囲気の清楚系美人だ。
クロエを嫁(仮)と呼んでいたら彼女はもちろん結婚もできないだろう。
まあ、本人が幸せならいい。
それよりロッテだ。
いつもおかわりをするはずのロッテがおかわりをしない。
「拾い食いでもしておなかが痛いのか?」
と心配になって身体の調子をロッテに尋ねる。
真っ赤な顔をしたロッテは大丈夫と答えてロボ丸が…とブツブツ言っているが心配だ。
ここは頼れる大人として、正しい拾い食い(採取ともいう)を指導してやろうではないか。
「せっかくいつもと違う場所に来たんだ。
昔と変わっていないならこの近くに黒スグリの茂みがあるはずだ。
甘い物が好きなロッテが気に入るような甘酸っぱいジャムを一緒に作ろう。」
と俺は提案した。
ワンコロも甘い物一番大好きと言っているがあいつはこの前は肉が一番好きって言っていなかったか?
やっぱり賢い俺は可愛いワンコロには突っ込まず、もふもふしてやった。
ジェイコブ兄さんはクロエを美しく着飾るために近くの町まで嫁と出かけるという。
嫁(仮)と幸せそうで何よりだ。
俺たちはお弁当を持って黒スグリの茂みを目指して歩みを進める。
大きな崖が目印だったはずだから場所を正確に覚えていなくてもたどり着くはずだ。
小川沿いに歩きながら大きな崖を目指した。
途中、大きな鯰のようにヌメヌメとした魔魚が現れたり
(ロッテがびっくりしつつも対応し上手く三枚おろしにした)
魔鳥が現れて苦戦したり
(ワンコロも三枚おろしにすると言って出来るわけがない構造の魔鳥を無理やり三枚にした)
したが些末なことだ。
魔獣の群れにロボ丸がスライム樹脂の耐久性を試したいからと組手の練習を始め、
それをみたワンコロが対抗意識を燃やして組手?を始め、
早く倒して先に進みたかったのにロッテが楽しそうに二人を応援しつつ俺の組手を期待するものだから泣く泣く百人組手に参戦するはめになった。
ケサランが途中で体力を回復する魔法を皆にかけてくれたのは良い思い出だ。
おかげでもっと組手ができるとロボ丸とワンコロが張りきった。(泣き)
そんなこんなで日が高くなるころ大きな崖の麓の黒スグリの茂みにたどり着いた。
ロボ丸の訳の分からない空間魔法を応用して植物の成長を促進し花を咲かせ結実させる。
理論的にはすんなりいけると思っていたが意外と苦戦した。
光の照射時間が花芽の形成を促す植物ホルモンの分泌に関係しているのだが、ものによって感度が違うことを考慮していなかった。
微調整に時間がかかってしまいそうだったので、その間に皆にはお弁当をゆっくり食べてもらった。
土魔法で土壌改良をしたおかげで大きく甘くなった黒スグリの実を皆で採る。
途中、実が崩れちゃうとかなんとか言い訳しながら甘酸っぱい黒スグリの実をデザートに皆でつまみ食いする。
ケサランも白い綿毛に濃紫色をまばらにつけて黒スグリを堪能してるようだった。
順調といえば順調。
珍事があったといえばあった。
適度に楽しく適度に緊張した皆との冒険もジェイコブ兄さんの家に戻ることによって終わりを迎えた。




