9-1
……トントントントン
…ジュワー
ベーコンの焼けるいい匂いがする。
目の前にはベイクドビーンズがある。
ベイクドビーンズ?
トマトと白いんげんを煮たそれはジェイコブ兄さんの大好物だった。
俺はやったことはないが、ジェイコブ兄さんはトーストの上にそいつを乗せて食べるのが好きだったな。
そうだった。
昨日は久しぶりに会ったこともあり、ジェイコブ兄さんと夜遅くまで最近の錬金術について酒を飲みながら語ってあっていたのだった。
魔力の使い過ぎで疲れていたこともあってそのままソファーで寝てしまったようだ。
昨日の酒のせいかどんよりと頭が重い感じがする。
「ジャガイモの有毒な部分は取り除きましょう。
人間に有害です。
ロボット三原則はご存じですか?
よろしい。
人間への安全性、命令への服従、自己防衛。
この三つを忘れてはいけません。」
蘊蓄が固い。ロボ丸が語っているようだ。
それに抵抗するように答える声が聞こえる。
「マイマスターのジェイコブ様ニハこの程度の毒は有害ではありません。
許容値ト言えるでしょう。」
ところどころ機械的な声はクロエの声か。
ジャガイモの芽を取る取らない論争でもしているのだろう。
ちょっとぐらいなら気にならないがおいしいとは思えないのでジャガイモの芽は取り除いてほしい派だ。
ジェイコブ兄さんはまだ寝ているようだし、一般的な感覚を持つ常識人としてアドバイスをしてあげよう。
2人のいるキッチンに向かう。
「おはよう。」
挨拶を交わす。
ジャガイモの有毒物質であるソラニンは保存時に日光に当ててしまうと発現してしまう。
大雑把なジェイコブ兄さんらしく適当に置いておいたのだろう。
クロエの手に握られているジャガイモは全面的に濃い緑色をしていた。
おいおいおい。
「そのジャガイモの様子だとジェイコブ兄さんでも嘔吐するレベルだ。
有害じゃない根拠は?」
さすがの俺でもわかるくらいだ。ひく。
クロエに尋ねる。
「この程度デハ死にません。
致死量の観点からするト許容範囲デス。」
クロエ!恐ろしい子!
ジェイコブ兄さんの苦労する姿が目に見える様だ。
よかった、俺の家にいたのがロボ丸で。
訂正の仕方が今後に繋がるかどうかは疑問だがクロエに一応訂正しておく。
「嘔吐などの身体の不調が出てくる時点で有害だ。
可食部分を使うようにしてくれ。」
クロエは不思議そうに一瞬フリーズした後「Yes,My master's junior disciple.」と答えた。
多分大丈夫だろうと俺はロボ丸に何を作っているか尋ねた。
「ジェイコブ様の形状及び言語アクセントなどからイギリス系の人種と推測いたしましたので二日酔いにぴったりな高たんぱくで油たっぷりの英国式ブレックファーストを作成しております。
そしてこちらのジャガイモはハッシュブラウンにする予定です。
カイ様は通常のレシピがよろしいですか?
それともニンニクを加えたアレンジレシピがよろしいですか?
私としてはキャラメライズドオニオンにチーズを乗せてお出ししようと思っていますので、チーズをより感じられたいなら通常のものを、
カイ様のお好きなホクホクを感じられたいならば大きめに切ったニンニクが入って2種類のホクホクを感じられるアレンジレシピの方をおすすめいたします。
あぁ、チーズは何にいたしましょう。
癖のないマスカルポーネ、酸味と癖のあるフェタチーズ、とろけるモッツァレラチーズ、他にも数種類ご用意できます。」
スライム樹脂を身に纏うようになったからか、ロボ丸は味覚だけでなく食感にもこだわるようになったようだ。
ロボ丸のおすすめが欲しいと告げると、ロボ丸は
「では二種類ご準備いたしますね。」
チーズはとろけるモッツァレラで、とジャガイモを厚くむき始める。
ロボ丸の肩に乗ったケサランが楽しそうにふわふわしている。
そこにワンコロが
「おいしそうないい匂い!
ワンコロはカリカリベーコンが食べたい!
こんがり焼いたソーセージも!」
と言いながらロッテと共に部屋の中に入ってきた。
軽く二日酔いなのだがおいしそうな香りに俺のお腹もいつの間にか食欲が湧いていたようだ。




