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もう一人の私を作る。
部屋の真ん中に敷かれた魔法陣のスクロールの中に皆が集めた材料が置かれる。
モルボルの珠。
ロッテ様とカイ様が探してきた金属。
ジェイコブ様の家にあった成分は分かるが合成方法が一部取得拒否される金属。
ワンコロ様の連れてきた精霊。
最後にケサラン様が謎の金粉を掛ける。
後は魔法を流すだけだ。
私を合成した時にたくさん魔力を使ったという事から皆で魔法陣に魔力を流すことになった。
皆でゆっくりと魔法陣に魔力を流す。
ワンコロ様が連れてきた精霊たちが嬉しそうに魔法陣の上で踊っている。
どんどん光が強くなり、光の柱が立つ。
踊っていた精霊たちが金属の中に入ると一気に光も金属の中に納まった。
ギギギギギ…
もう一人の私はまだ上手く動けないらしい。
手足の動き方を、
魔力回路の使い方を、
この世の理を、
もう一人の私に回路を接続して伝える。
自分と同じ存在。
ロボットという自分自身を理解してくれる存在。
愛おしいもう一人の私。
家族ができるとはこのような気持ちなのかもしれない。
もう一人の私はゆっくりと滑らかに動き出しジェイコブ様に向かって、
「マイマスター、ゴ指示ヲクダサイ。」
と頭を下げた。
喜んだジェイコブ様は、もう一人の私にいろいろ調べさせてくれとお願いいした。
カイ様もロボ丸との違いを見たいともう一人の私にお願いいをする。
私のように魔力をいろんなものから取り入れられるように改造も検討しているらしい。
そういえば、とジェイコブ様が別の部屋からゼリー状のものを持ってきた。
「これは?!スライムの変異種?!」
カイ様が驚いている。
「こいつ、壁の中にいたらしいんだけれど壁の外にもいる事が発見されてな。
カイが勘違いしているようだったからそのまま誤解させておいたんだ。
悪いな!
まあ、良かったじゃないか。
危険なところに行かなくて済んだし。」
と謝っているはずなのに悪びれもなくジェイコブ様が口だけで謝る。
なにかおかしいと思ったんだよねーとワンコロ様が言っている。
ワンコロ様は勘が鋭い方だからさもありなん。
ジェイコブ様は合成がお得意なようでカイ様と一緒に私ともう一人の私を改造する。
金属のボディにスライムの変異種を使用して魔力を通しやすくした樹脂をまとわりつかせて皮膚のようにする。
さらに、口の中の部分にもこの樹脂を纏わせる。
ジェイコブ様曰く、味覚も大事だが触覚も大事とのこと。
確かにロッテ様とワンコロ様がよく食感がうんぬんかんぬんと言っていた。
スライムの樹脂にゆっくりと魔力を通す。
樹脂の表面に空気の動きを感じる。
これが風を感じる。初めての感覚にうれしくなった。
「なんとなく見た目も人みたいになったが、鼻と耳が無いからどうしてもロボットみたいにみえてしまうな。」
後で鬘を被ってみよう、とカイ様が提案してくれた。
内骨格を人と同じような頭蓋骨の形になるように成形する。
もちろん口腔内を丁寧に作りかえる。
樹脂の厚さを人と同じように調整し、口腔内にも纏わせる。
「いかがでしょう。見た目は人間に近づきましたか?」
カイ様に問いいかけてみた。
カイ様が嬉しそうに目を見開く。
「驚いた。
声が滑らかになっているじゃないか。
ロボ丸は変形できるから後で顔の合成を一緒に考えようと思っていたんだが。
もしかして声帯を合成したのか?」
さすがカイ様は鋭い。
スライムの樹脂の柔らかさを利用して声帯を作り、
マンドラゴラからヒントを得た魔力の波を利用して人間に似せた声を出してみたことをカイ様に言った。
そうかその手があったか、とカイ様が喜んでくれた。
もう一人の私に魔力操作の仕方を伝える。
最初は上手くいかないようだったがジェイコブ様が「そこの部分はあと2ミリ高く」と|アドバイスしたおかげで女性的な|フォルムになったようだ。
「瞳の色が美しい緑色だからクロエって名前だ。」
とジェイコブ様がもう一人の私に名前をつけた。
私の名前はロボ丸だ。
ロッテ様が名付けてくれた時に、
「見たまんまの名前だとみんなに覚えてもらえて愛されるっておばあちゃんが言ってたの。
ロッテは生まれた時にとっても愛らしかったからそのまんま愛らしいって意味のシャルロッテって名前にしたんだって。
だから見たまんまで愛されるようにロボ丸ってお名前ね!」
と言ってくれた。
彼女も新緑を意味するクロエという名前。
見たままの名前を付けてもらった彼女にも祝福が訪れるだろう。
自分の進化もうれしいが、もう一人の自分も皆に愛されるかと思うと魔力を溜めている珠の部分が熱くなった。




