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小さな家に見えたのは壁が高かったからだ。
クライミングが得意そうな人なら登れそうなものなのだが中の壁はきれいに真っすぐで、魔術師が作っただけあって自己修復機能で壊しても元に戻ってしまうそうだ。
家の戸口に立ちノックする。
出てきたのはカイ様より年上の男性だった。
「ひさしぶり。突然連絡くれたときは驚いたが待っていたよ。」
と男性は家の中に私たちを招いてくれた。
ジェイコブと名乗った兄弟子は、人が来てもお茶を出すことはないからなと不揃いなカップでお茶を出してくれた。
出会ったことのない成分が入っている薬草茶のようだ。
この成分からすると腎臓機能の回復とむくみに効くことを目的としているようだ。
それでこれが噂のヒューマノイドかとジェイコブ様がカイ様に説明を促す。
「ロボ丸に味覚受容体を搭載しておいしいが体感できるようにしたい。
そのためにこの壁の中でスライムを捕ってこようと思っている。」
ジェイコブ様は少し思案したあと
「スライムっていうのは、あの甘いものしか受け付けない変わったスライムのことか?」
と聞いてきた。
カイ様がスライムの有用性についてと壁の中に入るために考えた安全対策についてひとしきり説明した。
「まあ、言いたいことは分かった。
どうしても変異種のスライムが欲しいと。
どうなっているかわからない壁の中もおまえなら大丈夫かもしれない。
だがな、兄弟子として師匠に怒られるのを分かっていて行かせる訳がないだろう。
たとえ師匠がこの世にいなくても。」
とジェイコブ様が無慈悲に伝える。
大丈夫なんです、と
私たち皆で壁の中に行けば大丈夫なんです、と言いたかった。
でも、それだけではこの方の意思を曲げる事は出来ないだろうと必死で考える。
ロッテ様とワンコロ様がジェイコブ様に自分たちもついて行くから大丈夫と訴える。
ケサラン様も大きくなったり小さくなったりして訴えている。
ジェイコブ様が目を閉じた。
なにかを考えていらっしゃるようだ。
しばらくしてジェイコブ様が目を開けて言った。
「イギリスの言葉にギブアンドテイクっていうのがある。
恩恵があるなら考えないこともない。
つまりはだ、具体的にいうと俺もヒューマノイドが欲しい。
しかもだ、カイの理論だとより人に近づける。
錬金術師の夢の塊だな!」
私を作る。
この中身のない無の私がもう一つできたなら、この空虚な部分を共有できるのであろうか。
ロッテ様にお願いいをする。
「ゼヒトモ私ヲモウ一ツ作成シテクダサイ。」
ロッテ様がうなづく。
「鉄みたいなのと、
ワンコロがくれた珠があれば作れます!
だよね、ワンコロ?」
ワンコロ様も嬉しそうに
「あのときは精霊もいたよね。
今からお外に行って呼んでくるね。
珠はこの前カイに渡したのを使っていいならすぐに作れるよ!」
とぴょんぴょん飛び跳ねる。
「モルボルのやつか。
ジェイコブ兄さんの頼みだしなんといってもロボ丸のためだ。
鉄みたいなのっていうのが心配だな。
炭素鋼だと錆びだろうからステンレスで探そうな。」
実は鉄ではなく鉛とニッケル、モリブデンなど様々な金属を融合させた特殊合金です。
可動部ごとに耐久性や魔力の伝導性を考慮して自身でいろいろ作り変えていました、とカイ様には後で伝えよう。
もう一人の私ならコツを伝えればカスタマイズできるはず。
もう一人の私ができることに魔力回路の巡りが良くなった気がした。




