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7-5

シナモンの(なつ)かしい匂い。

おばあちゃんが()いてくれたキャロットケーキの匂いがする。

おばあちゃんのキャロットケーキは森で()れたクルミとおうちの畑で()れたニンジンがたくさん入っている。

にんじんの甘みとクルミの(こう)ばしさがたまらないシナモンが(かお)るスパイシーなケーキだ。

美味(おい)しくなるコツはニンジンを(こま)かく(こま)かく(きざ)むこと。

面倒(めんどう)がってすりおろしたニンジンを使ってしまうとべっとりするし甘みも足りないらしい。

そして、(こう)ばしくなるようにクルミはじっくりオーブンで()いたもの。

上に()っている白いクリームチーズのフロスティングはちょっと苦手(にがて)だったけれど、大人(おとな)になったら克服(こくふく)できるはず。

おばあちゃんのキャロットケーキがロッテは大好(だいす)きだった。


そうだった。

今日はおばあちゃんに内緒(ないしょ)冒険(ぼうけん)()く日だった。

(こし)(いた)いって(つら)そうにしているおばあちゃんのために魔法薬(まほうやく)材料(ざいりょう)になる薬草(やくそう)()りに()く日だった。

本当(ほんとう)だったらこんなところにはないはずの可愛(かわい)い白いお花で、

世界(せかい)がぐちゃぐちゃに()ぜられちゃったから()えているのかしらね。」

と、おばあちゃんが()っていた薬草(やくそう)だ。

名前(なまえ)(わす)れちゃっていたその薬草(やくそう)()っこをしっかり(せん)じると腰痛(ようつう)()くんだよと(おし)えてくれた薬草(やくそう)

おばあちゃんのために今日は薬草(やくそう)()りに()くのだ。

場所(ばしょ)はしっかり(おぼ)えている。

森の奥深(おくぶか)く、毎年(まいとし)コケモモを()りに()途中(とちゅう)にある大きな木の()っこのところだ。

ロッテはおばあちゃんの()いてくれたキャロットケーキと採取用(さいしゅよう)のスコップをバックに()めて、

「森に()ってくるね!」とおばあちゃんに()げておうちを()たのだった。


()()んだけもの道を()けて、

コケモモの木の途中(とちゅう)()えている大きな木の下にロッテは(まよ)わずに()ることができた。

毎年(まいとし)(かよ)っている道だ、間違(まちが)えることはない。

(はじ)めて(ちか)くで()る大きな木。

いつもは横を(とお)()ぎるだけだったからだろう、名前(なまえ)()らない()いたこともない大きな木をゆっくりと(なが)めた。

村からでも存在(そんざい)()かるくらい大きな木なのに不思議(ふしぎ)と誰も話題(わだい)にしない。

(ふゆ)になっても緑の葉っぱの大きな木は、(あき)になっても()()らない。

きっと()()らないからみんな話題(わだい)にしないのかも。

ロッテはそう(おも)っていた。

それよりも薬草(やくそう)だ。

それは(ちい)さくて可愛(かわい)い白いお花の()薬草(やくそう)だった。

おばあちゃんは()っこを(せん)じるって()っていたはず。

ロッテは丁寧(ていねい)丁寧(ていねい)薬草(やくそう)(まわ)りをスコップで()()げて()っこごと採集(さいしゅう)した。

ところが、()ってみると(おも)っていたより()っこが(ほそ)くて(みじか)い。

1本しか()えていないから薬にするには()りないかもしれない。

ロッテは不安(ふあん)になって他にも同じ薬草(やくそう)()いか(さが)(まわ)った。


ないな。

ないな。

みつからないな。


たくさん(さが)したのに()つからない。

ちょっと(やす)んでおばあちゃんのキャロットケーキを一()れいただこう。

(つか)れたロッテは(こし)かけられる場所(ばしょ)(さが)して(あた)りを見回(みまわ)した。

目印(めじるし)にしていたはずの大きな木が()えない。

ぞくっと寒気(さむけ)がした。


迷子(まいご)だ。


雨音(あまおと)がし(はじ)めた。

(あめ)がポツリポツリと()って()たようだ。


どうしよう。

どうしよう。

どうしよう。


こんな時は(うご)(まわ)ってはいけないっておばあちゃんが()っていた。

ロッテは(ちか)くの比較的(ひかくてき)立派(りっぱ)な葉っぱの木の下に()れないように(ちい)さくなった。

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