ファイナルー2ー
それからどうなったのかは恋華にはわからない。
意識が飛んでいた。龍馬におんぶをしてもらって病院に行こうとしてたところまでは把握している。それから…
『………』
重たい瞼を開けた。酸素マスクがつけられている。息が苦しい。眩しい。見たことがない天井が見える。
ベッドの上かな……?
恋華の頭は不安でいっぱいだった。
体が痛いというよりかは、心臓が……
『しん………』
声が出なかった。掠れている。
手を動かした。
『あっ…』
恋華の手が誰かの頭に当たった。
そしてその頭は動いた。
『…………!!恋華!?』
その声は聞いたことがある。いつも恋華を慰めた声。
『りゅ……ま』
『だ、大丈夫!?俺がおんぶして医者に見てもらおうと思ったら恋華気失ってて…』
『そうな……………!!』
体を動かそうとしたら、心臓が押し付けられるように痛くなって心拍数が上がっているような気がした。
『恋華?…恋華!?』
心臓を抑えて蹲る恋華の背中を龍馬はさすった。
そしてまた気を失ってしまった。
それから何日経っだろう。恋華は目を開けた。
天井が見える。見たことがある天井。気を失う前の最後に見た天井だと思う。
ベッドの上…ここは病院…だよね
首を回すことが出来て左を見た。
明るくて、眩しい。太陽が光っている。
右を見るとカーテンがしまっていた。
静かだから誰もいないと思う。
もう一度右を見ると、テーブルの上に置き手紙があった。
掛け布団から手を出して置き手紙を取る。
『恋華へ
おはよう。体調は大丈夫?学校から帰ったら御見舞に行きます。5人で行こうかなって思ってます。ご飯ちゃんと食べなきゃダメだからな。 行ってきます
by.龍馬』
『私、なんでここにいるんだろう。』
心臓は痛い。でもこんな事までにならなくてもいいのに。診察して薬貰えば大丈夫じゃないのかな。
恋華は不安でいっぱいだった。
(死んだりしない…よね)
ガラガラ…
病室から男の白衣を来た人がやって来た。たぶんこの病室の医院長だろう。
『塩谷さん。おはようございます。』
『あ…おはようございます…』
『…朝食は…』
『あの、私病気なんですか?病気ならなんの病気なんですか?教えてください。』
恋華はベッドのシーツをちぎれるんじゃないかと言わんばかりの力で握った。
『…落ち着いてください。大丈夫ですから。塩谷さんは心臓病…という病気です…塩谷さんが気を失っているときに診断させていただきました。』
『心臓病……?』
名前から心臓に関係していることはもうわかっていた。
『どんな病気なんですか…?私……私、死んだりしませんよね…………!!』
それは急に訪れた。心臓が圧迫されるように痛い。苦しい。手足が痺れる。
『塩谷さん!すぐに…』
『大丈夫ですから!!!』
恋華は、涙を堪えながら龍馬の手紙をクシャクシャになりながらも握った。
『でも治療しなければ…』
『大丈夫です!まだ…まだ小さい方ですから…』
息が荒くなりながらも医院長の人に話した。
『おさまりました…』
『また、心臓が痛くなったらすぐに言ってください。このままじゃ死に至る……場合がありますから…それでは朝食はもう少しだと思うので…私はこれで失礼します…』
医院長の人は顔を暗くすると同時に『死に至る』という言葉を口にしたら声の音量を少し小さくした。
(やっぱり。もう私死ぬんだ。)
『先生…』
『はい』
『私はあと…どれくらいで私は死んじゃうんですかね…』
『……お伝えしてもよろしいですか…?』
『はい。覚悟はできています。』
『長くて5ヵ月ほど…です。』
『……そうですか…ありがとうございます。』
涙を堪えながら言ったため、声が震えた。
(長くて5ヵ月…短くて2ヶ月とか3ヶ月かな…明日死んでもおかしくないのかな…嫌だ…)
堪えていたはずの涙は頬を伝って握りしめた龍馬の手紙に落ちてシミが付いていた。
〜夕方5時〜
『あ、恋華!おきてたんだ!』
5人で来るはずだが、龍馬一人で来ていた。
『いやぁー他月たちも誘ったんだけど、みんな受験が迫ってきてるからか塾とかバイトとかでこれなくてさー!』
『…そうだよね…』
恋華の声は龍馬の声よりもトーンが低かった。笑顔なんて…あと3ヶ月くらいで死ぬ人間が笑顔なんて…できない。
『恋華…病院の先生に話聞いた…よな?…まぁ、病気って言ってもすぐ治るって!恋華なら病気なんかに負けないって俺も知ってるしみんなだってわかってるから!だから』
『あと3ヶ月くらい…』
『え…?』
『私…みんなと卒業したい……龍馬と同じ大学に行きたい…』
涙が溢れた。長くて5ヶ月……恋華の命は12月で無くなるということになる。
『恋華……一緒に大学に行こう!恋華なら大丈夫だから!だから…』
『無理だよ!!今から長くて5ヶ月だよ!?無理じゃん!!龍馬とスキーに行けないし、クリスマスパーティーもできないかもしれないし、夏休みだって私いるかわからないんだよ!?それなのに大丈夫とか人事みたいに言わないでよ!!』
初めて龍馬に怒鳴った。心拍数も上がっている。
『ごめん…』
『………』
こんなに龍馬が悲しい顔をしているのは初めて見た。
『でも、諦めないで頑張ろう。死ぬことを考えるんじゃなくて生きているときに何をしたいか考えようよ。俺もできる限りのことはやる。恋華は…何したい?なんでもいいよ。やりたいこととかなにかに再挑戦したいとか…』
龍馬は、さっきとは違って少し笑顔を見せていた。そして龍馬はリュックから『数学』と書かれたノートを取り出して1ページ切り取った。
『テニス…やりたいな』
『テニスか!OK!他には?』
『え…テニスいいの?』
『なんでもいいって言ったじゃん!できるかわからないけどとりあえずやりたいのとか教えてよ!』
龍馬がニコニコ笑っている。龍馬の笑顔は安心する。
(私が大好きな笑顔……)
『一緒に暮らしたいな…』
『誰と?』
『龍馬に決まってるじゃん』
恋華もニコニコ笑った。龍馬は少し固まって顔を少し赤くさせながら恥ずかしがっていた。
『だめ?』
『いい…よ』
『じゃあ、龍馬と一緒に暮らしたい』
『わかった…他には?』
『そうだなあ……あ、お願いごとでもいい?』
『おう!』
『……ずっと龍馬に笑っててほしいな』
『え…?そんなことでいいの?』
『うん。龍馬の笑顔、好き。どんなときでも笑っててほしい。悲しかったら泣いていいけどそれ以外は龍馬の笑顔でみんなを幸せにしてほしいな。龍馬にしかそれはできないよ』
『なにそれ…照れる』
龍馬は顔を背けた。
それから龍馬と恋華の『やりたいこたリスト』を作った。




