ファイナルー3ー
それから、龍馬は面会時間が終わるまでずっといてくれた。
龍馬が帰ったあと恋華に外出許可が降りた。でも、車椅子での移動、なにか異常か起きたら知らせるという約束を先生とした。
『よっ!恋華!』
『れんちゃぁぁぁぁんんんん!!』
次の日の夕方、龍馬と真姫が来ていた。
『れんちゃん!大丈夫!?病気って聞いたから心配になっちゃって…あ、病名は知ってるから大丈夫だよ!クラスの人は知ってるからね!』
『あと、優也と柚も知ってる。』
『あ…ごめんね。今日塾で顔出すくらいしかできなかったけどいつ退院するんだろう…。あ、今年はみんなで海行こう!あと冬にはクリスマスパーティーとか!…うわぁぁ!時間がない!ごめんね!また行くよ!お大事にね~』
真姫は走って病室から出た。
『……真姫たちには伝えてないんだ。寿命があること……』
『………そうなんだ……』
『そういえば、外出許可出たんだろ?明日、学校休みだしそこらへん散歩しようぜ』
『でも……』
恋華は本当はすごく外に行きたかった。でももしも途中で体に異常が出たら龍馬にまた迷惑が……
『どうした?』
『散歩したい…』
『おう!あー明日楽しみだな…』
龍馬は笑っている。その笑顔はキラキラしていた。
『私も楽しみだけど…怖いなぁ…』
久しぶりに外に出るからか、楽しみの中に不安も混じっていた。
『どうして?』
『何が起こるかわからないじゃん…。もしかしたら体に異常が…心臓が痛くなるかもしれない……今日もお昼に痛くなって薬増やされちゃった…』
『…その時は俺がいるから大丈夫。無理しないで心臓痛かったら言えよな?』
『うん』
~次の日~
『よーし!行くかー!』
『うん』
車椅子に乗って恋華はやりたいことリストの紙を握った。
『恋華、どう?心臓痛い?』
外に出ると日差しが眩しかった。
『ううん。なんか久しぶりだなー…』
『どうする?どこ行きたい?』
龍馬は小さい子供みたいに目を輝かせてワクワクしながら恋華の目を見て聞いた。
『うーん。学校に行きたいな…』
『学校?あ、OK!』
学校に行く道であるものを恋華は見つけた。
『あれ?今日、学校休みなんだけどなぁ…』
恋華の視線に気がついたのか龍馬は、仲良く歩く高校生のカップルを見ながら頭をかいた。
そのカップルは今日の学校の授業の話をしている。お昼休みの話とかこれからのこととか…。
『……恋華!昨日の授業で美術があったんだけどさ、うちのクラスの水山いるだろ?あいつが、絵の具のバケツ零して、俺の制服が濡れたんだよ!そしたら水山がさ「俺悪くねーしー!」とか言ってくるんだよwホントにあいつガキなんだよなー!w』
龍馬は、笑いながら話してくれた。私が行っていない学校の今を楽しそうに話してくれた。
『あとさ、昨日売店にロールパン買いに行こうとしたら、ちょうど売り切れでさー残ってたのが…あの一番まずいって言われてるチーズパンだったんだよwまぁ、他月から弁当少しもらったからいいんだけどw』
『えええ!あのチーズパン?私も食べたことあるけどオススメできないなぁw』
自然と恋華も笑っていた。
『俺も1口だけ食べたことあるけど、美味しくないよな!でも他月は美味い美味いって食べてるけどw』
『他月らしいねw…いつも5人で仲良くお昼食べてる?』
『おう!……よし!じゃあ、こんど6人で病院で食べない?』
『え…いいの?』
『思い出作りしようぜ!絶対にいい思い出作ってあげるから!』
『……なにそれ嬉しいじゃんか』
嬉しくて涙が出そうだった。
『じゃあ決定!!楽しみが増えるな~…』
龍馬の楽しみが増えるという言葉は少し悲しそうだった。
楽しみが増えると共に恋華の死が近づいているということは龍馬も十分にわかっている。
『着いたぞーー!』
『わぁぁ……』
恋華は、久しぶりに見た自分の高校は入学式と同じ感情だった。
友達ができるか不安だった入学式当日の思い出と、もうこの高校に通うのは無理かもしれない、死ぬかもしれない今。
『校内入る?』
『…うん。テニスコートに行きたいな』
『じゃあ行くか』
『あ…』
テニスコートには、つい5ヶ月前まで教えていた後輩達が帰ろうとしていた。
『あ!塩谷先輩!!』
こっちに気がついたのか、2年生の部長の子が恋華に駆け寄ってきた。それに釣られて後輩達もついてきた。
『大丈夫ですか!?』『何があったんですか!?』『学校にはもう来ないんですか!?』と後輩達は心配そうに恋華を見つめる。恋華は何も言えなかった。『もう私は死ぬんだよ。もう学校には来れないの』なんて言えない。後輩にだけは悲しませたくない。
『恋華は、少しの間だけ入院することになってるんだ。だから学校には今のところ行けない。恋華は車椅子に乗ってるけど元気だから。心配しなくて大丈夫だよ。』
龍馬が優しい目で後輩達に教えた。嘘を。
『そうなんですか…。お大事になさってください!それでは!』
後輩達は『さよなら~』と言いながら校門を出て行った。
『ごめんね。ありがとう。』
恋華はボソッと呟いた。
『言いにくいよな。心配しなくていい。』
『うん。』
『他にどこ行きたい?』
『……龍馬…手足が痺れる…』
『え…?』
『龍馬……!』
恋華の手は震えながら心臓を抑えた。
『大丈夫!?恋華!!心臓痛いの?』
『痛い…いつもより痛い……!』
恋華は泣いている。痛すぎる。いつもよりも押し付けられて苦しい。
龍馬は恋華の背中をさすりながら、携帯で救急車を呼んでいた。
それから病室に戻って、寝ていた。
気を失ったんだ。
(なんでこんな弱い体に生まれてきちゃったんだろう…)
『恋華……』
やっぱり傍にいつも龍馬がいる。
手を握っていてくれていた。小さい頃の龍馬は、恋華と同じくらいの手の大きさだったのに、今は恋華の手は龍馬の手にすっぽりはまるほど大きくなっていた。
『せっかく…外出許可が出たのに…こんなことになってゴメンね。楽しみ…にしてたんだよね…』
こんな自分はもう嫌だった。いつ心臓が痛くなって、いつ気を失うのかわからない。怖い。龍馬の楽しみを自分のせいで奪ってしまった。
(なんで私を捨てないんだろう…。彼女が病人なんて嫌なはずなのに…。もっと健康な子で明るくて手間がかからない子のほうが龍馬はきっと望んでるはずなのに…。なんで私を捨てないの…)
こんなに自分を追い詰めたのは初めてだった。溢れる涙は止まらなかった。
『今、なんで私を捨てないんだろうって思ったでしょ?』
龍馬は恋華の顔を伺った。
『え…なんで…』
『わかるに決まってるじゃん。顔でわかる。てか、なんで恋華を捨てなきゃいけないの?って感じw病人だから?泣き虫だから?恋華が病人でも恋華は変わらない。俺の中では恋華はずっと俺が知ってる恋華。泣くのは悪いことじゃない。てかどんどん泣いてほしい。苦しかったり、泣きたいときはいっぱい泣けよ?』
『龍馬…これからどうすればいいのかな…怖くなってきちゃった…』
恋華は『ヒックヒック』言いながら龍馬に訪ねた。
龍馬は恋華を抱きしめた。
『楽しいこといっぱいしよう。怖いよね。俺も自分が死ぬってわかったら怖いよ。さっきも言ったけど俺がたくさんいい思い出絶対に作ってあげるから。約束する。自分で言うけどいい思い出作ってあげれるのは俺しかできないって思ってる。今はいっぱい笑って幸せだったって絶対に恋華に言わせるから!俺の目標な!』
龍馬は、笑って恋華の頭を撫でた。
『うん!期待してるね』
恋華も笑った。
『もう帰らなきゃ…明日も来ていい?てか毎日来ちゃダメ?』
『いいけど、大学受験…』
『大丈夫!勉強してるから!』
龍馬は、リュックに入っている教材を見せた。
『これ、全部やってるの…?』
『もちろん!大学行きたいし!』
『頑張って応援してるよ!』
『おう!ありがとう!じゃあな!』
『ばいばい!』




