お願いごと〜2〜
入院ベッドに龍馬は、寝ていた。
酸素マスクを付けられて体は動かない。
『なんで、龍馬がこんな思いしなきゃいけないんだろうね…』
龍馬の手は相変わらず冷たい。
冷え性なのは小学校の時から知っている。
夏でも龍馬の、手は冷え冷えだった。
今度は私が龍馬を守らなきゃ…
恋華は、立ち上がって龍馬に『帰るね。ばいばい』と言って病室を出ていった。
ー次の日ー
『おはよー』
『あ、恋華。おはよう』
他月がイスの向きをクルッと変えて、恋華と向かい合わせになった。
『なぁなぁ。あと少しで夏休みだぜ。龍馬が退院したらまた6人でどっか行かね?』
龍馬がうちわをパタパタと動かしながら聞いてきた。
『受験勉強はいいの?…ってあれ?他月就職?』
『違う。専門校』
『え…どこの?音楽?』
『そう。やっぱり俺には音楽しか取り柄ないし。ドラム一筋かなって』
『そっかー』
『恋華は?…恋華、就職っぽい』
他月がニヒッと笑った。
『私は大学』
『はぁ!?お前…マジで言ってんの!?』
『もちろん!たまたま龍馬も同じ大学希望なの!でも…そんなお金どこから降ってくるのやら』
大学に入るならもちろん入学金がかかる。授業料だって。
『父さんに相談すれば?』
『おとう…さん…』
(あぁ。そんな人いたなぁ……)
『お父さん…は…いいの!大丈夫!私、バイトですごい頑張ってるし!』
『バイトだけで、大学の入学金とか授業料払うなんて無理に近いだろ…。たまたまうちの高校が授業料も安いから良かったものの…大学なんてどこも入学金と授業料は高いからな?』
『わかってるけど…わかってるよ!!でも、もう私に家族なんていないの!!』
恋華は、机を思っきり叩いて立ち上がった。
『れ、恋華…?』
『れんちゃん!どうしたの…?』
真姫が走って向かってきた。
目から大粒の涙が零れた。
『え!ご、ごめんって!どうしたんだよ…』
家族なんていない…そのとおりだ。
お母さんはもうこの世にはいなくて、お父さんは恋華を見捨てて出ていった。
『私に……家族………いないの…』
『わかった。大丈夫だよ。』
真姫は理解してくれたみたいだった。
『え、俺全然わかんないんだけど…俺、恋華の友達だから教えてほしいんですけど!』
『れんちゃん。言うよ?』
恋華はコクリと頷いた。
『あのね。れんちゃんのお母さんがいないってことは他月も知ってるよね…?』
『もちろん』
『それでね、れんちゃんのお父さんは……いるんだけど……一緒に暮らして……』
『お父さんは…私を見捨てた……もう帰ってこないんだよ』
真姫が言おうとした言葉を恋華は言い倒した。
『え…どういうこと?』
『中学を卒業した後、春休み中に家のテーブルに「1人で頑張ってください」みたいなことを書いた手紙が置かれてて、手紙の右下に「by.父」って書いてあって字体もお父さんのに似てたからもうお父さんは……』
『これ以上言うな。言わなくていい。もうわかったから。聞いて悪かった。』
他月は表情を暗くして恋華に言った。
『この話やめよ!楽しい話!そうだな…あ!今度みんなで新しく出来たケーキ屋さん行かない?龍馬も元気になったら誘って!』
真姫が新しく出来たケーキ屋さんのチラシを見せた。
『昨日オープンしたばっかりのお店なんだぁ〜』
真姫は楽しそうに話す。
『柚もこういうの好きって言ってたなぁ』
他月がモンブランを指さした。
『あ、これ柚に似合う!クールな感じっていうか…。でも名前からして柚のシフォンケーキも柚好きそう!れんちゃんはどんなの食べたい?』
真姫がチラシを恋華に見せた。
『私は、ティラミスとか好きだなぁ。チョコ系が好きだからね』
『そっかー!よしよし!みんなで今度行こうね!あ、龍馬がちゃーんと良くなってから』
『うん』
キーンコーンカーンコーン
他月は椅子を前にクルッと向きを変えて、真姫は体を前にした。
『ありがとう』
席が前の2人に小さな声でつぶやいた。




