探し物
『今度の土曜日、どこかでかけない?』
『土曜日は、バイト…』
『……日曜日は?』
『バイト………』
『…………そっか』
放課後、ケーキ屋で龍馬とケーキを食べながら話していた。
『ごめん。』
『…しょうがないよ!!私も日曜日、夜からバイトだったし!』
恋華は『あははっ』と笑ってケーキを食べた。
『なぁ、恋華?』
『なにー?』
『別れない…?』
恋華は口に入れようとしたフォークを止めた。
『え…?』
『別れ…ない…?』
龍馬はただそれしか言わなかった。
『なんで…?』
恋華は少し苦笑しながら聞いた。
『なんかこのままお互いに辛い思いするだけだよ。俺は少し恋華と距離を置きたい。』
龍馬から放たれた『辛い思いをするだけ』という言葉の意味がわからなかった。
(私は辛い思いしてないよ…?)
『……わがままなこと言ってるかもしれないけど、正直俺ら続かないと思う。申し訳ないけど俺の恋華への気持ちも冷めてきちゃってるんだ…。ごめん』
龍馬は、お金をテーブルの上に置いてリュックを背負ってお店を出ていってしまった。
(この前ずっとそばにいるって言ったじゃん…)
もう龍馬は、ただの知り合い。
(そうだよね…。こんなめんどくさい奴彼女にしたくないよね…)
勉強もできない。泣き虫。いじめられてばっかりで弱い。助けてもらってばっかり。
(でも…。龍馬じゃなきゃダメなのに…)
~次の日の朝~
教室に入るとバケツ1杯の冷水をかけられた。
『わっ!』
『塩谷さーん。おはよー』
嫌味にしか聞こえない声がした。
『制服に泥が付いてたから取ってあげたんだけど……。お礼は?』
前を向くと、クラスのいじめグループが恋華の前に立っていた。
『え……?』
『お礼。ないの?「ありがとうございます」も言えないくらい馬鹿になってたのー?……あんたのこと前々から大ッ嫌いだったんだよねー。中学と小学のときは人殺しの娘だから避けてたのに、高校になって人気出てきたからって調子にのってさ。正直あんたなんて邪魔なんだよねー』
『邪魔なら…邪魔なら私に構わないでよ!!』
恋華は、勢いで彼女の顔を叩いた。
周りの人も音に反応して恋華のことを見た。
『いった…』
恋華は彼女が頬を抑えているのを見て、体が震えた。
(私、なにしてんの……)
『あ…えっと…』
『あんたってそんな人だったんだ……。サイテー。あ、あと…』
『いじめてること、先生とか仲いい人に言ったら……どうなってるかわかってるよね?大人しいんだから黙っててね』
彼女は恋華の耳元で呟いた。
『よっ!恋華ー!おはよー…ってうわっ!濡れてんじゃん!どうしたの!?』
他月が後ろから教室に入ってきた。
『え…?』
いじめグループの子を見ると睨んでいた。
『えっと…さっきバケツ運んでたら転んじゃって……バケツの水がバシャーって…』
『えええ!大丈夫かよ!お前バカなんじゃねーの…。』
他月がやれやれという表情をしていた。
『とりあえず、保健室行って着替え…』
『いいの!!大丈夫だよ!すぐに乾くよ!』
『いや…風邪ひくだろ…』
『大丈夫!』
『なぁ、恋華』
『なに?』
『お前、昨日なにかあった?』
『え…?あっ…』
一番に思いついたのが龍馬と別れたことだった。
『言っちゃうとね……龍馬ね…』
涙が止まらなくて呼吸するのが大変だった。
『そ、そんなに辛いことだったのか…?』
『龍馬と…別れちゃった…』
『はぁ!?ウソだろ!?なんでだよ!めっちゃ仲良かったのになんで!』
『龍馬に別れようって言われちゃった……。私、馬鹿だよね。これからもずっと一緒にいるって思ってたのに別かれちゃったんじゃもうしょうがないよね』
『話し合ったのか?』
『ううん。龍馬がもう私といると疲れちゃうんだって……。龍馬がそれで幸せになるならいいかなって…』
『あとは?悩みある?俺でよければ相談相手になってあげますけど?』
『ううん…ないよ…。ありがとう』
『どういたしまして』




