テロ&右腕
『うーん....どれにしようかなぁ....』
大型ショッピングモールの水着売り場でラッシュガードを選んでいた。
『これとかどうだ?』
一緒に付き添ってくれた柚が白のラッシュガードを持ってきて見せた。
『反映色だから太って見えちゃうから....』
『でも、黒だったら日差しを吸収するから暑いぞ...』
『そっか....あ!みて!白と黒のストライプ柄のラッシュガードあった!』
それは私が求めていたラッシュガードであった。
『おお!いいやつあったじゃん!』
ばーーーーーーーん!!
どこからか爆発音が聞こえた。
『な、なになに!?何が起こったの!?』
周りの人はパニックになっていた。
『もしかして....』
あたりから警報が鳴り、出入り口のシャッターがすべて閉まってしまった。
『静かにしろっ!!』
黒いニット帽にマスクを付けた男が拳銃を持っていた。
『テロ....』
隣にいた柚がそっと呟いた。
『大人しく座れ!さもないと撃ち殺すぞ!』
私たちは静かにその場に座った。
『ど、どうしよう....殺されちゃう....』
とにかく、怖かった。相手は拳銃を持っているし、言う事を聞かなければ殺されてしまう。
『おい、お前ら。今警察やらに10億円の身代金をもってこいと報告した。もし、身代金を警察が持ってきたらお前らをここから解放してやろう。た、だ、し。もし持ってこれなかったら....まぁわかると思うが全員殺す。わかったな?』
『まずいな....』
柚が下唇を噛み締めていた。
『10億円ってどんくらい....?』
『は?』
いや、10億円なんてそんなに使わない気がする....
『1億円を10個な』
『いや、それはわかるけど想像がつかないというか....』
『おい、お前らなに話してんだ?』
テロのメンバーらしき人が私たちを睨む。
『え、あ、いえ何もしてないです....』
『あぁ?なんか話してただろ?言えよ』
『....』
『黙ってねーで言え』
心臓が痛くて何も言えない。
『....』
『はやく言えよ!』
パキュン!
その途端、右腕に痛みを感じた。今まで感じたことのない痛みだった。
その場で私は倒れた。
周りからは悲鳴が聞こえ、柚が私の名前を呼ぶ声がした。
それから何時間....いや何日経ったのだろうか....
目を開けることができた。
そこは病院だろうか、ベッドに寝ていた。
目の先には、天井と....
『龍馬?....』
龍馬の顔があった。
『恋華!起きた!』
龍馬は、喜んでいた。
でも....右腕に力が入らなかった。というか右腕がない感覚がした。
右腕を見ると包帯でぐるぐる巻きになっていた。
『ゆ、柚は!?柚はどこ....』
隣のベッドを見ると柚が寝ていた。
『柚....どうしたの?』
『恋華が撃たれた後、柚も撃たれた。』
『ど、どこを撃たれたの....?』
『腹部....腹部は、1番危ないらしい。生きているかどうかもわからない状態なんだ....』
ガラガラッ!
扉が開くと、息切れしている他月がいた。
『恋華!生きてたん....だな....』
他月は、私を見て喜んでいたが柚を見ると顔を下に向けて落ち込んでいた。
やっぱり、自分の彼女が生きているかわからない状態だったら、それは落ち込むだろう。
『柚の両親は来たの....?』
『あぁ。昨日の夜にきた。他にも先生やバスケ部の顧問とテニス部の顧問。それに真姫と優也も来た。保険の先生も来てた。』
『そんなに、来たんだ....』
『柚のお母さんは泣いてた。柚のお母さん、心配症だって柚が言ってたからやっぱり、自分の娘が死と生の境目にいるとなると心配するよなって....』
その時思った。
(うちの親は来なかったんだ....)
お母さんは、中学の時に交通事故で亡くなったのはもう知っている。でもお父さんは来なかったんだ....。
高校の1年の終わり、お父さんはうちを出て行った。
なんでかは知らない。私を捨てたんだって今でも思っている。
あんな男....いなくなればいいのに....
『恋華....あと、1つ悲しい話があるんだ....』
『なに?』
『恋華の右腕....一生使えなくなったんだ....』
『え....?』
うそ....
『テニスできないじゃん!それに、字も書けないし箸だって持てないし....手術でなんとかできないの!?....』
『手術もできるらしいが、成功する確率がものすごく低く、失敗したら両腕が使えなくなるんだ....』
『一生使えないって....』
『柚....?』
他月が急に柚を呼んだ。
柚が目を開けたのだ。
『柚!!生きてた....柚が生きてた....』
他月は、号泣だった。
『なに泣いてんだ、お前...』
柚が少し笑って右腕を伸ばし、他月のほっぺを引っ張った。
『いててっ!だ、だって!柚が死ぬかもしれないって病院の先生が言ったから、どうしようって!』
『そうなのか....』
柚が私を見てきた。
『恋華、右腕....』
柚は、私の右腕を見た。
『一生....使えないんだって....』
『え....』
『大丈夫だよ....気にしてなんか....』
『ばーか。気にしてんじゃん。』
『いたっ!』
龍馬がおでこにデコピンしてきた。
『あ、そうそう!恋華は明日退院で、柚は明後日退院ね!』
他月が笑顔でそう言った。




