第9章 ふたたびドワール王国へ!
でも、しんとしたリビングが、答えだった。お茶を飲もうと冷蔵庫を開けると、お父さんが2人分のコンビニ弁当を用意してくれていた。お母さんは帰ってこないっていう現実を突きつけられているみたいで、すごくさみしくなった。
なんとなく、こうすけもゆうすけも何もしゃべらなかった。静かに家を出て、ジェムおじさんの家に向かった。
ジェムおじさんの家の前に着くと、中から鼻にかかったような甲高い声が響いてきた。
「所長!!いったいぜんたいどういうことなのですか?!?!また野生化の犠牲者が現れただけでも国民は動揺しているのに、研究室にヒュゴルを連れてくるなんて!!研究室は大パニックでみんな仕事どころじゃあなかったんですからね!!あのヒュゴル達はどこへ行ったのですか?!もうこちらの世界に返しているんでしょうね?!」
中に入ると、1匹の白衣を着たアライグマがさけ叫びながらジェムおじさんに詰め寄っている。
「まぁまぁ。そんなに怒らんでも。」
二足歩行のアライグマとフクロウが向かい合ってしゃべっている。まるでディズニー映画の実写版みたいだった。あらいぐまのあまりの勢いに、こうすけとゆうすけはその場で立ち止まって2人のやりとりに見入ってしまっていた。
「あ、おまえたちはさっきのヒュゴル!!」
アライグマがこうすけたちに気が付いて言った。
「危険な奴らめ!!所長には指一本触れさせないですからね!!覚悟しなさい!!」
アライグマは、ジェムおじさんを守るように前に立ち、魔法の杖を出して戦闘態勢をとった。
「げっ。ま、まじかよ。よーしっ!」
ゆうすけは慌てつつも戦闘が嬉しいかのように素早く身構えた。
「こらこら、待つのじゃ。」
「おいおい、待てよ。」
ジェムおじさんとこうすけが、アライグマとゆうすけの間に入って2人を止めた。
「ウルよ、おまえはそうやってすぐに大事なことを確認をせずに暴走する。この子たちは、封印された魔法の捜索に力を貸してくれている大切な協力者だ。おまえの王国に対する忠誠心が強いところはいいことじゃが、物事を冷静に考えろと常々言っておるだろう。」
「止めないで下さい、所長!!危険じゃないヒュゴルなんて本当にいるのですか?おまえたち!所長になにかしたら許さないのですよ!!」
ウルというアライグマを制止するように、ジェムおじさんが左の翼を広げた。
「わかったから、ウルよ。もうやめなさい。こうすけくん、ゆうすけくん、すまんな。こいつはウルといって、研究所の職員なのじゃ。根はとてもいいやつなんだが、少々血の気が多くてな。許してやってくれ。ウルよ、こちらはヒュゴルで魔法が使えるこうすけ君とゆうすけ君じゃ。」
ゆうすけはジェムおじさんとこうすけに止められて、しぶしぶ戦闘態勢を解いた。
「はじめまして。さかもとこうすけと言います。こっちは弟のゆうすけです。」
こうすけが落ち着いた声で、ウルに挨拶をした。ゆうすけもしぶしぶ頭を下げた。
「お前たち、ヒュゴルのくせに魔法が使えるのですか?」
「くせにって。ええっと、まぁ、はい。」
こうすけがウルの勢いに押されながら答えた。
「やっぱおれ、一発殴っとこうかな?」
ウルの失礼な態度に、ゆうすけが握り拳を作った。
「こらこら。ここは平和的に。」
そう言ってゆうすけを制止しながら、ウルというアライグマは暴走体質でうるさいし失礼なやつだなとこうすけは思った。
「ふん、剣だって出せるんだぜ。」
ゆうすけは得意げにスターティアと唱えて右手を出したが、ふわっと煙が出て消えただけだった。
「あれ?おっかしいな?」
「フンッ、ヒュゴルに魔法が使えるわけありませんよ!!」
ウルは悪態をつくように言った。
「こちらの世界ではうまく使えないようだな。」
ジェムおじさんは、また新しい発見をしたぞと喜んでいるようだ。こうすけは透明化など魔力消費の少ない魔法ならできるが、武器の具現化などの魔力消費の大きいものはできないのだろうか、などと分析していた。
「こうすけ君ゆうすけ君、一度ドワール王国へ戻って、城へ行こう。先代国王について何かわかるかもしれない。」
ジェムおじさんが、ウルにドワール城へ訪問の許可を取るように指示した。ウルはまだ納得できていない様子だったが、ジェムおじさんの指示に従い、奥の部屋に向かった。
しばらくして、ジェムおじさんはグリトスに転送魔法の指示を出した。一行はグリトスの転送魔法でドワール王国へ向かった。
「ここどこ?」
転送魔法で到着した部屋を見てゆうすけが言う。
「ここはドワール城の応接室じゃ。」
ジェムおじさんが説明する。
その時、ガシャっとドアが開いた。
「ジェム博士、こんなに急な訪問とはいかがされたのかな。それにヒュゴルの子どもを同席されるなんて前代未聞!なにごとですかな。」
甲高い声がしたが、声の主が見当たらない。視線を下げると、3匹の小さなハムスターがいた。すました顔をしているが、足は信じられない速さで動いてこちらに近づいている。体長は20センチほどだろうか。歩幅が小さいので、この大きな城内を移動するためには自然とそうなるのだろう。足の動きの速さに対する移動速度の遅さとのギャップと、威厳のある声とそのコミカルな動きのギャップにこうすけとゆうすけは笑い出しそうになった。しかし、このプライドの高そうなハムスターは怒るとめんどうな奴だと察して、こみ上げる笑いを必死にこらえた。どことなく教頭先生に似ているな、とこうすけは思った。
「ムスタ大臣、申し訳ない。急ぎで調べたいことがありましたので。先代国王の部屋を見せてもらえませんかな。」
ジェムおじさんは真ん中のハムスターに話しかけた。
「まさか、魔法の封印の謎が解けたのですか?」
「そのために調べさせてほしいのじゃ。」
ムスタ大臣は両サイドのハムスターに指示を出し、こうすけたちを先代国王の部屋へ案内させた。
案内された部屋は、一国の王様の部屋にしてはやけに地味な部屋だった。
「校長室みたいだね。」
「たしかに校長室を真似しているみたいだ。この部屋に手がかりがあるといいんだけど・・・。」
こうすけとゆうすけ、ジェムおじさんは部屋の中を調べ始めた。
「校長室だと、ここに転送魔法の飾り棚があったんだよな。」
こうすけは本棚を調べ始めた。そこには分厚くて難しそうな本が沢山並んでいる。どれも見たことがない文字で書かれているが、言葉の意味がイメージで理解できた。魔法の力が働いたのだろう。
「だいたいこういう本棚はなにか仕掛けがあるんだよね。」
そうつぶやきながら、こうすけは本を一冊ずつ確認した。
「あれ?」
何冊目かに手にとった本には日本語が書かれていた。その瞬間、本棚がブンッいう音とともに消えた。消えた本棚の代わりに地下へ降りる階段が現れた。
「こうすけ君!これは!!」
ジェムおじさんが驚く。
「どこの国もダンジョンの入り口は同じなんだな。」
こうすけはゆうすけを見てニッと笑った。
「さすがゲームマニア。」
ゆうすけもニッと笑った。




