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隣の空き家が異世界への入り口でした  作者: あきのりんご
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第12章「国王の復活」

こうすけ達は野生化した国民たちが集められている裏庭へ向かった。ドワール城の裏庭は、小さな動物園のように柵で囲われて、動物が休むための小屋が建てられていた。そこでライオン、パンダ、あの時のトラが放し飼いにされていた。トラは甲冑を脱がされ、野生のトラになっていた。同じ柵の中にいるのにお互い無関心のようで、静かに休んでいる。   

 ここに来る途中で、ムスタ大臣とすれ違い、不法侵入者だなどと騒がれたが、七獣魔導士だと紹介すると、すぐに黙って固まっていた。

「ゆうすけ、頼むよ。」

こうすけが、心配そうな顔で言う。

「任せて!」

兄の心配をよそに、ゆうすけは元気いっぱい無邪気に答えた。

ゆうすけはライオンの背中に手を置いた。今の国王だ。ゆうすけは器用だ。きっと心配ない。もちろん細かな手先の器用さはこうすけの方が上だが、球技や体操競技など、体を使うスポーツは練習をほとんどせずに感覚でこなしてしまう。

ライオンの背中に置いたゆうすけの手がまぶしく光り。ゆうすけの髪がなびいた。ライオンはゆっくりと両足で立ち上がった。

「こ、これは・・・??」

状況が把握できていない様子だ。

「国王様!ご無事で何よりです。」

ジェムおじさんが前に出て跪いた。

「成功したね!じゃあ次に行ってくるねー!」

ゆうすけはシェミーと一緒にトラの方へ向かった。

ジェムおじさんは国王にこれまでの経緯を説明した。ちょうどトラとパンダを獣人の姿に戻し終あわったゆうすけが戻ってきた。

「なるほど、君たちが助けてくれたのか。王国を代表して礼を言う。ありがとう。」

国王が深々と頭を下げた。こうすけとゆうすけが子どもながらに萎縮してしまうほどのオーラがあった。

「国王様!よくぞご無事で!」

そこに、ムスタ大臣が2匹の部下を連れてやってきた。

「ううう、この日をどれほど待ったか。七獣魔導士によって、戻られたのですね!!」

ムスタ大臣は、興奮のあまり立場を忘れて国王の膝に抱きついている。

「ささ、国王様、こんなところではお体も冷えましょう。早く城の中へ。」

ムスタ大臣が矢継ぎ早に喋り続け、小さな体を全速力で動かして、国王を城内へ案内しようとした。

「ムスタ大臣。」

国王が呼びかけた。

「そこの七獣魔導士様たちをご案内して、おもてなしして差し上げるのだ!!」

しかし、国王の声はムスタ大臣に聞こえていないようで慌ただしく部下達に指示を出し続けている。

「ムスタ大臣!!」

国王の声が響いた。まるで咆哮だった。周囲の空気が震えてこうすけとゆうすけは肌がビリビリとするのを感じた。ムスタ大臣とその部下はその動きをピタッ止めて固まった。

「ムスタ大臣、私を救ってくれたのはこちらのこうすけとゆうすけだ。丁重にもてなしなさい。彼らへのこのような無礼は、今後許さん。七獣魔導士のおふたりも一緒にご案内しろ。くれぐれも失礼のないように。そして、ヒュゴルの勇者よ、あとひとり助けてほしいものがいるのだ。頼めるかね。」

国王はこうすとゆうすけには穏やかな笑顔を向けた。

「もちろん!」

元気よく答えたゆうすけは、いつの間にかこうすけの斜め後ろに隠れるように立ってる。国王みたいな人を怒らせると1番ヤバいんだよな、とこうすけは心の中で思った。

「ムスタ大臣、後は頼んだよ。」

国王はムスタ大臣には命令した。ムスタ大臣は深々と頭を下げた。

「さあ、みなさん、続きは城の中で。」

国王はそう言って護衛を連れて城の中へ入っていった。

「みなさま、着いてきてください。」

ムスタ大臣はこちらを向くことなく、くるっと背中を向けて歩き出した。ゆうすけはシェミーを抱えて追いかけた。その後ろから、ジェムおじさんとグリトス、こうすけも続いた。

グリトスとシェミーは先に応接室へ行き、ジェムおじさんは調べものをするために別行動をとった。残ったこうすけとゆうすけが城内の一室に案内された。

 その部屋には中央に小さなベッドがあり、ムスタ大臣より少し小さいハムスターが寝ていた。

「私の妻、ラスタです。つい先日、野生化の被害者となりました。我々は体が小さく寿命も短い種族なので他の種族より衰弱のスピードが早いのです。どうか、妻をお救いください。」

ムスタ大臣はこれまでの態度とは全く違って、こうすけとゆうすけに深く頭を下げた。

「任せて。」

ゆうすけは優しく言って、寝ているラスタ夫人の頭に手を置いた。ラスタさんの体の大きさに合わせて、これまでより小さい光が2人を包んだ。

 柔らかで温かい光は、静かに小さくなって消えた。見ていたこうすけたちはとてもあたたかな気持ちになった。

「もう大丈夫だよ。」

ゆうすけはムスタ大臣に向かって言った。ムスタ大臣はベッドに駆け寄ってラスタ夫人の手を握った。ラスタ夫人の青白かった顔色は赤みがさして健康的になり、ハァハァと苦しそうだった呼吸がスースーという穏やかな寝息に変わっていた。

「ラスタ・・・。」

ムスタ大臣は、握りしめたラスタ夫人の手を額に当てて肩を震わせた。

「よかった。間に合って本当によかった。」

ムスタ大臣は大粒の涙をポロポロとこぼしながら、ゆうすけに向かって頭を下げた。

 こうすけとゆうすけは、ムスタ大臣の姿が自分たちの境遇と重なって見えて、心がぎゅっとなった。


その後、ムスタ大臣に応接室へ案内された。お菓子や飲み物、それに豪華な食べ物が並べられていた。

「やっぱ肉だな!!」

そう言いながらグリトスはガツガツと豪快に料理を食べていた。

「先に始めてるわよ。あなたたちのために用意されたんだから、さっさといただきましょう。」

シェミーもこの小さなパーティを楽しんでいるみたいだった。

こうすけもゆうすけもずいぶん久しぶりに食べる食事だった。出された料理は、どれも美味しかった。なんとなく2人に馴染みやすい味だった。一通り食べて満腹になった頃、ドアを叩くノックの音がして国王が護衛を連れて入ってきた。王族の服を着て二足歩行で歩く国王の姿は、人間みたいだ。きっと昔の校長先生の姿もこんな感じだったんだろうとこうすけは思った。

「こうすけくんゆうすけくん、改めて礼を言う。我が国民を救ってくれてありがとう。そして、七獣魔導士のグリトス、シェミーも生きていてくれてよかった。」

そう話した国王の姿には威厳があった。こうすけとゆうすけは緊張して小さくお辞儀をした。

 コンコンとノックの音がして、アライグマのウルを連れたジェムおじさんが入ってきた。国王に向かって深くお辞儀をした。

「2人も座りなさい。」

国王がそういうと、ジェムおじさんとウルは開いている席に座った。さすがのウルも、国王の御前なのでおとなしくすました顔をしている。


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