第7章 僕は
「おはよう! 蒼太、お前ちゃんと寝てるか? 冴えない顔してんぞ」
「うん。一応……ありがとう」
「大地はいつも元気だね……」
綾那はまだ少し、さやかちゃんことユミのことを考えてしまうようだ。
リー・シャオイェンーー通称:スチームパンクーーたちが捕まったことで、久しぶりに学校に登校できた。
「もうすぐ学園祭があるらしいぜ。行ったらスゲー手伝わされそうだな」
大地は、手伝わされそうと言いながら、とても楽しそうに笑った。
「学園祭か〜」
色んなことがありすぎて、自分が高校生だって忘れてた。
「そっか、もうそんな時期なんだね〜」
綾那もしみじみしている。
「おーよ。俺ら色々ありすぎたからな。少しは高校生らしいことして楽しもうぜ」
「うん」
確かに大地の言う通りだ。
学校での授業は、しばらく休んでいたせいで、殆どついていけてない。
そのせいもあって、どうしても樹さんの言葉を思い出してしまうーー
絶対的な支配、相手を従わせる、禁忌……本当に悪魔の力だ。
なんで僕がこんな力を? 樹さんは持つ理由を考えろと言っていたが、理由なんて思いつかない。
あれからずっと、そのことばかり考えているが、答えなんて見つからない。
僕が持つ意味。
王の玉座ーー
絶対的な支配ーー
悪魔ーー
なぜ僕が?
どうして僕にこんな力が?
みんなが学園祭の準備をしている声が聞こえる中、放課後はには休んでいた分の鬼の補習に取り組んだ。
宿題にも大量のプリントが出されて……部屋に帰ってからも、綾那と二人で黙々とプリントの山に挑んだが……
「もうやだーーーっ! ノ〜ワ〜〜〜助けて〜!」
綾那がと、ソファに寝ていたノワの体にスリスリとおでこを擦り付けた。
「はぁ……。コーヒーでも入れようか?」
僕はズルズルと席を立ってキッチンに向かった。
ケトルを火にかけてから、甘いスティックのコーヒーとマグカップを取り出した。
時計は午後十一時を回っているので、さすがに春花ちゃんはもう寝てしまった。暇を持て余したノワも寝ていたのに綾那に起こされ、た腹いせに綾那の髪の毛に噛みついてる。
「蒼太っち……気持ち悪いよ……何にやけてるの……」
「い……いや……ノワがかわいいなって……」
「ところでさ、蒼太っち、力の方はどうなの? あの後」
「うん……。使ってない」
「まぁ、そうだよね〜」
綾那はノワを胸に抱き上げ、起き上った。
「うん」
あの力を誰かに試すなんて、軽々しく試すようなことなんか出来ない。
けど、あれから日に日に鉱物の力が増してきているーー
そんな感じがしている。
「もしさ、この力が暴走したらどうしよう」
「暴走?」
「あれから、どんどん力が強くなってる気がして……」
「あははははは! 当たり前じゃん! 蒼太っち使えるようになったばっかなんだからさ、最初はみんなそんなだよ」
「え?! そうなの?」
「当たり前じゃん!」
そんな単純なことじゃない……気がする。
でも、綾那が笑い飛ばしてくれたことが、僕には嬉しかった。
出来ることならこの力はもう使いたくない。
あの時のスチームパンクたちの様子ーー
無表情で感情がなく、ただゆらゆらと力なく命令に従う……
人形みたいだった……
もしも、自分が命令される側だったら?
僕にはもういないけど……家族、大地や綾那、春花ちゃん、学校の友達、管理局の人たち……
とりとめもなくグルグルとこんな考えが繰り返されているけど、答えなんか見つからない。
一週間ほど補習と膨大なプリントの宿題に取り組み、なんとか授業についていけるようになった。
その後は、学園祭の準備に買い出しやら、装飾品の作成などと慌ただしくも高校生らしい学校生活送ってきた。
そして、今日はその学園祭当日だ。
僕らのクラスは『脱出ゲーム』教室内の迷路を進みながら謎を解き、ゴールを目指すゲームだ。
なかなかに趣向を凝らした謎を解きながら進む迷路が人気で、休む暇もなく忙しなく仕事をこなしていた。
「こういうの楽しいな! スゲー人気だし」
大地は楽しそうにそう言って、慌しく動き回っている。
「蒼太っち、疲れたよ〜」
綾那は教室前の受付係と呼び込みの係のはずだが、ぶーたれて控え室にやってきた。
「わかったって。綾那はまだ交代じゃないだろ」
「そうだけどさー」
背中を押して受付に連れ戻した。
ぶーたれつつも綾那も大地も僕も、大地が言っていたようにその日を楽しんだ。




