37話:優しさにふれて
セナは私を抱き締めた。
息が詰まりそうなほど強くそして、優しく包み込むように。
「やるなー兄ちゃん」
はっと我に返ったのはそんな冷やかしの声が入った時。
いつの間にか、私たちは大勢の群集に囲まれていた。
「何何ー? 何かの撮影とか?」
「あの男の人かっこよくない?」
やば。忘れてた。
途端に顔が赤くなっていく。
セナも同様、少し顔が赤かった。
「逃げようか」
そっと耳元で耳打ちされて、私は頷いた。
手を引かれてその場を猛ダッシュで逃げた。
その時のセナは少し楽しそうで、私まで笑顔になってしまった。
やっとのこと路地裏にかくれた。
「くすくす。あはは」
なぜだか笑いがこみあげてくる。
セナはそんな私を優しい眼差しで見つめた。
思わず目を逸らしてしまう。
今、気付いたことだがこの路地裏は想像以上に狭かった。
その分だけ二人の距離も縮まる。
「ねぇ、まだ返事聞いてない」
耳元を甘い声がくすぐる。
つられて鼓動もびくんと大きく飛び跳ねた。
「こ、こちらこそ、お、お願いします」
少しどもったが、セナは優しく頭を撫でてくれた。
それでも、やっぱり少し不安げな様子だった。
「セナ。私、いなくならないから。私はずっとセナの傍にいるから」
そう言うと、セナは私の前で初めて泣いた。
私の肩でうずくまって声も出さずに。
その姿は凄く繊細で小さく見えた。
私はセナの大きな背中をぽんと撫でた。
「ありがとう」
セナはそう小さく呟いた気がした。
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涙が止まらなかった。
彼女の優しさに触れて、暖かさに触れて。
僕の冷えて固まった心をゆっくりと溶かしてくれる。
「ありがとう」
本当に小さい声だったから聞こえただろうか。
彼女は何も言わず、僕の背中を優しく撫でてくれた。
もう失わない。このかけがえのない暖かい存在を。
今、君はどんな顔をしているだろうか?
次話で完結にする予定ですが……、うまく終わらせられるでしょうか(笑




