23話:独占欲
ぎりっと爪が食い込むほど腕を掴まれた。
「痛っ」
そう呟くと、セナははっとしたように手を離した。
「ごめん」
連れてこられたのは、あまり人気のない校舎裏。
本当に静かな場所だ。
「あのさ、やっぱりその髪型やめよう」
焦ったようにセナはそう言う。
やっぱり変なんだ……。
そう思ったら、ほろりと涙が出てきた。
「……萌花?」
「や、やっぱ、そん、なに……へ、ん?」
私、何泣いてんだろ……。さすがにセナも引くよね……。
そう思っても、やっぱり涙は止まらない。
「ーーーっ」
言葉に詰まったようにセナは固くなった。
何で、そんなに赤くなるの?
「へ、変じゃないけどさ。やっぱりやめよう」
やっぱり焦りながらそう言う。
「わ、わかった!! そんなに変ならこんな髪型やめてやる!!」
かっとなり、無理やりゴムをほどいた。
少し髪の毛が抜けたが、気にしない。
「もういいよ!! 天童君なんか大嫌い!!」
そう言い放って、走ってクラスに戻った。
ちょっと言い過ぎたかな。いや、あれはセナが悪いよ。
----------
-----
「はぁ……そうじゃないのに」
セナは一人校舎裏で呟いた。
萌花は可愛い。凄く。だけど他の奴らには知られたくない。
独占欲。
こんな感情知らなかった。
だけど、本当に彼女を独り占めしたくて……。
頭によぎった考えを振り払った。
だめだ。彼女を好きになっては。
セナはまた一つ溜息をついた。
--------
-----
セナってばひどいよ!!
あんな事言わなくてもいいのに。
頭の中はそのことだらけ。
先生の授業も身に入らなかった。
あっという間に学校も終わって……。
はぁ、今日は家にも帰れないし。
友美の家に泊まらせてもらおうかな。
そんな事を思いながら、通学路を歩く。
辺りは少し暗くなっていた。
怖くなって、反射的に早足になる。
トコトコトコ。聞こえるのは自分の足音しかないはずなのに……。
後ろから聞こえるもう一つの足音。
怖くなって走った。その足音も追いかけるように早くなる。
怖い……。
まさか、この前のストーカー!?
とんとん。
と肩をたたかれた。
「お嬢ちゃん? ちょっと一緒に来てくれるかい?」
振り向くと、にたぁっと黄色い歯を見せ笑う中年のおじさん。
やだ……気持ち悪い。
怖くなって無視すると、腕を掴まれた。
掴まれたところがぞわっとして鳥肌が立った。
声を出そうとしても声にならなかった。