18話:なんだか痛い
「な、何?」
後ろに回された手をほどこうとするが、なかなか抜け出せない。
それよりか、更に強く抱きしめられた。
「は、離してくれない? 恥ずかしいんだけど」
言ってみても、返事はない。
さっき、あんな話したから変に意識しちゃうじゃん……!!
「何でここ居んの? 学校は?」
尋ねるとぼそっとした声が頭上から聞こえた。
「休んだ」
セナ……様子がおかしい。
ってゆーか、体熱い? 息も荒くて……。
「天童君!! あんた熱あるんじゃ……」
セナから返事はない。
強く私を抱き締めていた手もだんだん緩んできた。
セナから離れてセナの額に手を当てた。
「熱っ……。やっぱり熱だ」
セナをなんとか家まで連れて行った。
そして、ドアを開けるとセナを布団に寝かせた。
セナの頭に冷たいタオルを載せ、体温を計る。
「38.6度……。結構ある」
相変わらずセナの息は荒い。
何処かに風邪薬があったはず……。
「ほら、これ飲んで」
錠剤と水を無理やり飲みこませた。
「じゃあ、私はこれで……」
「行くな」
その場を急いで離れようとすると、腕をつかまれた。
強い命令口調に胸がどきりと音を立てる。
「もうちょっとここに……」
そう言うと、そのまま眠ってしまった。
はぁ、そんなこと言われると行けなくなっちゃうじゃん。
セナの寝ている隣に腰掛ける。
綺麗な顔してるなぁ……。
私より睫毛長いし、髪の毛もさらさら……。
ほんと神様って不公平だと思う。
溜息を吐くと、セナの顔が少し歪んだ。
また荒い息づかいを立てる。
「大丈夫!? しんどい!?」
「……な」
「……?」
「み……美奈」
ぼそっとだったが聞き取れた声。
美奈って初恋の……?
胸が痛んだ。分からないけど、なんだか痛い。
しかし、本当にセナが苦しそうな顔をしているので少し頭を撫でてあげた。
すると、セナの顔はまた落ち着いた寝顔に戻った。
「……なんか、痛いな」
胸を少し押さえると、そう呟いた。
そして私も少し横になることにした。
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目が覚めると布団の上。
横には萌花がすーっと寝息をたてて寝ている。
頭の上のタオルをとると、しばし萌花の顔を見つめた。
「ふぅ……やばいな」
呟くと、優しく萌花の頭を撫でた。
「僕ももう、忘れないとな……」
窓の外を見ると、もう夜。
レアは帰ってきているはずだ。
しかし、萌花をあまり一人にはできない。
セナはそれからまた萌花を見つめるのだった。




