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第23話 農家、思い出す

 ――暗い。

 目を開けているのか閉じているのかすら分からない。

 ただ、闇があった。音もなければ風もない。ただの、無。


 俺はそこで立ち尽くしていた。

 ……いや、立っているのか、浮いているのか、それすら分からない。

 ただ、ぽつんと「在る」だけだった。


 誰かと一緒にいた気がする。

 でも、それが誰だったのか、どうして一緒にいたのか、何も思い出せない。


 考えようとすると、頭が霞んでいく。

 この闇は、思考すら吸い込んでいく。


 ……眠い。

 どうでもいい。何も考えなくていい。ただ眠ってしまえば楽だ。


 そうだ……何か大事なことがあったはずなんだ。

 でも……もうどうでもいいや……寝よう……。


 ………………。


 ……ん?

 ……誰かが、呼んでいる。


 声? ……いや、音はない。ただ、確かに「呼ばれている」と感じた。

 誰だ……?思い出せない。


 ――光。

 眩しい光が、暗闇を裂いた。


 俺は目を細める。そこに見えたのは――小さな子供。

 楽しそうに笑って走り回っている。


 ……あぁ。俺だ。

 あれは、俺の小さい頃。懐かしいな。


 だけど、その隣にいる子は――誰だ?

 ずっと俺の隣にいて、同じように笑っている女の子。

 顔がぼやけていて見えない。


 時間が流れる。

 子供の俺は成長し、やがて少年になった。

 そして、女の子も同じように大きくなっていく。


 いつも隣にいる。

 でも、誰だか思い出せない。


 思い出せないはずなのに――彼女を見ていると、胸の奥が温かくなる。

 不思議だ。ただそこにいるだけで、こんなにも安らぐなんて。


 ……眠い。

 このまま、この光景を見ながら眠ってしまえば、それでいいんじゃないか――。


 ……いや。

 もっと、もっと強い光が差し込んできた。

 闇も眠気も、すべてを焼き払うような光。


 その瞬間、霞んでいた女の子の顔が、はっきりと見えた。


 ――レイカ。


 そうだ、レイカだ!

 俺は、まだダンジョンの中にいるんじゃないか!

 あいつらが戦ってるんだ!

 俺は……俺は、何をしてるんだ!!


 行かなきゃ!

 レイカのところへ!水城のところへ!ベジのところへ!


 目を開けろ……!

 俺は、まだ終わってない……!

「農民こそが最強です。〜うっかりダンジョンを水没させたら世界最強になってしまいました〜」もよろしくお願いします!


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