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第19話 農家、水城の頭脳プレーを目撃する

 灼熱の大広間に、火竜の咆哮が響き渡った。天井を震わせるほどの重低音とともに、烈火のブレスが吐き出される。炎の奔流が床を舐め、石が赤く焼けただれる。


「くっ……!」

拓海は腕で顔を庇いながら後ずさった。さっきの“頭脳プレー(笑)”が脳裏に蘇り、ますます情けない気分になる。


 そんな彼の前に、水城が静かに一歩出た。

「高山。あなたのやり方はともかく、考え方そのものは間違ってないわ。だから、よく見てなさい」


 真っ直ぐな声に、拓海は思わず姿勢を正す。


「ベジ!」

水城は低く呼びかけた。

「火竜を翻弄しながら部屋の隅に誘導しなさい。できるわね?」


 ベジは力強く「ワン!」と吠え、爪を煌めかせて炎の竜へ突進していく。


「レイカ!」

今度は鋭い視線をレイカへ。

「ベジが誘導した先で、土壁を作って閉じ込めるのよ。小部屋を作るイメージで。……それと、刀での攻撃も準備しておきなさい」


「はい!」

レイカは刀を握り直し、真剣な表情で頷いた。


「二人とも行くわよ!」

水城の号令と同時に、作戦が動き出した。


 ベジが鋭い爪で火竜の鱗を叩き、挑発するように横へ駆ける。炎に焼かれても怯むことはない。同じ炎属性を纏うベジだからこそできる芸当だった。火竜は怒りの咆哮をあげ、獲物を追うようにその巨体を揺らす。


 その間にレイカは膝をつき、両手を床に押し当てた。土属性の魔素を練り上げ、渦巻く力を全身に溜め込んでいく。

「……まだ……まだ……!」


 水城も同時に、銃を構えながら魔素を溜めていた。水属性の魔力が彼女の周囲に集い、青白い光を帯びて膨れあがる。


 そして――。


「今よ!」

水城の声が響いた瞬間、レイカが地面に掌を叩きつける。轟音と共に土壁が伸び上がり、火竜を隅に閉じ込めた。


「はああぁぁッ!」

水城が銃口を土壁に向け、溜め込んだ魔素を一気に解放する。特大の水流弾が撃ち出され、狭い小部屋に叩き込まれた。


 瞬間、爆発音とともに蒸気が立ち昇り、辺り一面が白く覆われる。

「……これで倒せれば儲けものなんだけど」

水城は息を整えながら呟いた。


 だが――。


 ドゴォンッ!

土壁が内側から粉砕され、蒸気を突き破って火竜が現れた。全身は水蒸気に濡れ、炎の勢いは弱まっているが、まだ健在だ。


「やっぱり無理だったわね……」

水城は冷静に現状を見極める。だがその瞳は鋭い光を宿していた。


「でも――火が消えて、弱点が丸見えよ! レイカ! 火竜の喉元、鱗の色が違うところを狙いなさい! あそこが逆鱗!」


「はいっ!」

レイカは叫ぶと同時に地面を蹴り、疾風のように駆け出した。


 火竜が巨腕を振り下ろす。しかし、その瞬間――水城が魔素を込めた弾を放つ。弾丸はレイカの刀に命中し、青い光が刀身を包み込む。

「水属性付与――!」


「うおおおおおッ!」

レイカが気合と共に跳躍し、炎の巨体へ肉薄する。狙うはただ一点。喉元に輝く“逆鱗”。


 次の瞬間――鋼と水の刃が閃き、逆鱗を貫いてその奥の火袋を斬り裂いた。


「ギャアアアアアアアアッ!」


 火竜は断末魔の咆哮をあげ、内部から炎が暴発する。だが、火を生み出す器官を破壊されたそれは自滅に等しく、力尽きてその場に崩れ落ちた。


 静寂。蒸気の残滓が舞う中、水城はレイカの肩を叩き、そして拓海の方を向いた。


「高山。これが頭脳プレーよ。力だけじゃない。どう使うか――それを肝に銘じなさい」


「……はい!」

拓海は思わず背筋を伸ばし、かしこまって答えるのだった。

「農民こそが最強です。〜うっかりダンジョンを水没させたら世界最強になってしまいました〜」もよろしくお願いします!


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