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第13話 農家、トレントと対峙する

「ギィィィィ……!」

トレントの咆哮が響いた瞬間、ベジは地を蹴って飛び出した。


「ワンッ!」

その口から放たれたのは、真紅の炎。富士山のマグマすら思わせる熱波が、巨大な木の身体を一気に包み込む。


「よっしゃ! 属性相性はバッチリだ!」拓海がスコップを掲げて叫ぶ。

「……相性が良いのに、苦戦してるように見えるのは気のせい?」水城が冷静に指摘する。


実際、ベジの炎は確かにトレントの樹皮を焼き、黒く焦がしていた。だが次の瞬間、幹の奥から新たな枝が伸び、焼け焦げた部分を覆うように再生していく。


「ギィィ……」

その枝がムチのように唸り、ベジに襲いかかる。ベジは身を翻して避けるが、地面を薙ぎ払った一撃で岩盤が粉砕された。


「くっそ……! SSSランクのボスを超えてやがる……!」拓海は歯噛みする。


ベジは懸命に炎を吐き続けるが、相手の再生力があまりにも高い。相性で有利なはずの炎が、まるで焼け石に水だ。


「ベジ一匹じゃ……押し切れない!」拓海が叫ぶ。

「なら二人なら勝てる!」レイカが一歩前に出た。


彼女が長刀を地に突き立てると、土の防壁が隆起してトレントの枝を受け止める。

「ギギギ……!」枝が叩きつけられ、火花と木片が散る。

「はぁぁっ! ベジ、今よ!」


ベジは吠え、炎を纏った爪でトレントの再生中の枝を斬り裂いた。焦げた断面が再生するより早く、さらに次の一撃を重ねる。


「いいぞベジ! そのまま畳みかけろ!」拓海が拳を突き上げる。

「ちょっと……応援してるだけじゃなくて、あんたも何かしなさいよ!」レイカが振り返って怒鳴る。

「俺のスコップは最後の切り札だって!」拓海は必死に言い訳する。


再び枝の一撃。だがレイカの土壁が受け止め、そのわずかな隙にベジが炎を浴びせかける。枝が焼き千切れ、トレントの咆哮が洞窟を揺らす。


「ギィィィィ……!!」

トレントは最後の力を振り絞り、巨体ごと倒れかかってきた。


「今だ……! ベジ!」レイカの叫びに応えるように、ベジは炎を纏った体で跳躍。

空中で四肢を大きく振りかぶり、炎の彗星のように突っ込む。


――ドガァァァンッ!!


直撃。爆炎と共にトレントの胴体が裂け、燃え広がった炎は再生を許さない。巨体が軋みを上げながら崩れ落ち、やがて完全に沈黙した。


「……ふぅ、やった……」レイカが土壁を消し、長刀を下ろした。

ベジは誇らしげに胸を張り、拓海のもとへ戻ってくる。

「ワン!」

「おー、よくやった! さすが俺のベジ!」拓海は全力で頭を撫で回す。


水城は冷静に銃を下げつつも、小さく笑った。

「……属性で有利でも勝てない。やっぱりこのダンジョン、普通じゃないわね」

「普通じゃないってレベルじゃねぇよ……」拓海が肩を落とす。


だが彼らの視線の先、崩れたトレントの残骸の中で、淡い光が脈打っていた。

「……ダンジョンコア?」レイカが目を丸くする。

拓海は眉をひそめ、スコップを構え直した。

「やっぱり……ボス一体一体がコア持ちか……」


富士山ダンジョン、最初の試練を突破したばかりだというのに、既に空気は重々しい。

それでも、彼らの旅は始まったばかりだった。

「農民こそが最強です。〜うっかりダンジョンを水没させたら世界最強になってしまいました〜」もよろしくお願いします!


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