第12話 農家、富士山ダンジョンに突入する
「うおお……すげぇ……」
拓海は思わず声を漏らした。富士山の内部に広がるダンジョンは、洞窟というよりも神殿のような荘厳さだった。溶岩の赤が壁を照らし、空気は重く張り詰めているのに、不思議と不快ではない。
「モンスター……全然出てこないね」レイカが肩をすくめる。
「普通なら入った瞬間、雑魚に囲まれてチュートリアル戦闘って流れよね」水城が冷静に答える。
「ゲーム脳すぎるぞ二人とも」拓海は苦笑した。
しかし確かに変だ。ダンジョンといえば、スライムやゴブリンがわらわら出てくるのが定番だ。それがまったくない。広い通路を延々と歩かされ、ただのハイキング気分である。
「なぁ、これって……もしや“ハズレダンジョン”?」レイカがぼそっと言った。
「富士山がハズレってあり得るか!」拓海が即座にツッコむ。
やがて視界が開け、巨大な空間に出た。そこにはまるで試練の舞台のように、5つの分かれ道が口を開けていた。
「分かれ道……雑魚モンスターがいないところをみると5体のボスが居るかもしれないわね……」水城がつぶやく。
「え、5体? まさか全部ボス部屋?」レイカが顔を青くする。
「あぁ、確かに強い魔素をそれぞれの道から感じるからそうだろうな……」
拓海は腕を組んでどの道から進むべきか考え込む。だが、その時。
「ワン!」
ベジが突然吠え、左の通路に向かって尻尾を振りながら走り出す。
「お、おい待てベジ! 勝手に決めんな!」拓海が慌てて追いかける。
「犬の直感って結構当たるもんよ?」レイカは呑気に笑ってついていく。
「この状況で犬任せ……ありえないでしょ……」水城はため息をつきながらも結局従った。
しばらく進むと、湿った空気と共に植物の匂いが漂ってきた。次の瞬間――
「ギィィィ……」
地響きと共に現れたのは、巨大な樹木の怪物・トレントだった。
腕は蔦、体は樹皮、目は苔むした瘤の奥で赤く光っている。
「わぁ……やっぱりベジの勘当たり!」レイカが嬉しそうに声を上げる。
「当たりってレベルじゃねぇ! ボス戦確定じゃねーか!」拓海が慌ててスコップを構える。
水城は冷静に銃を抜きながら、しかし小さく苦笑した。
「……やっと“ダンジョンらしく”なったわね」
トレントの枝が天井に届くほど伸び、轟音と共に襲いかかる。
いよいよ富士山ダンジョン、最初の試練が幕を開けた――。
「農民こそが最強です。〜うっかりダンジョンを水没させたら世界最強になってしまいました〜」もよろしくお願いします!
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