第10話 農家、富士山へ
拓海は自宅の縁側で頭を抱えていた。
昨晩の野菜モンスター事件――いや、野菜惨殺事件と言うべきか。愛情込めて育てたゴーヤやトマトが、よりによって「ダンジョンの意思」とかほざきながら勝手に消えていったのだ。
「……俺の野菜たちがぁぁ……」
拓海は涙目で地面に突っ伏す。
そこへ、ひょいと顔を出したのは幼なじみのレイカだ。
「なにやってんのよ、拓海。朝っぱらから畑でうめき声上げて。変な人に見えるって」
「う、うるさい! 本当に変なことが起きたんだよ!」
拓海が必死に昨夜の出来事を説明すると、レイカは半目になってため息をついた。
「はぁ? 喋るゴーヤ? ……拓海、寝不足で幻覚でも見たんじゃない?」
「まじだって! “我はダンジョンの意思”って言いやがったんだ!」
そんな言い合いをしていると、水城が険しい表情でやってきた。自衛隊の制服姿はやっぱり板についている。
「二人とも、状況は笑い事じゃないわ」
「み、水城さん……?」
「たった今、連絡が入ったの。富士山周辺のダンジョンからモンスターが一斉に消えたって」
空気が一気に張り詰める。
拓海は直感的に魔素感知を発動させた。すると――全身に寒気が走る。
「……ヤバい。魔素が……富士山に吸い込まれてる」
「ちょ、ちょっと! それって噴火とかするんじゃないの!?」とレイカが声を上げる。
水城も眉をひそめた。
「富士山は三百年もマグマを溜め込んでいるのよ。そこに魔素が蓄積すれば……日本が吹き飛ぶ規模の噴火になってもおかしくないわ」
拓海は大きく息を吐き、拳を握った。
「……行くしかないな」
すると、すぐにレイカが立ち上がる。
「よし、私も行く!」
「ちょ、いやいや危ないって!」
「なに言ってんの。あんた一人に任せられるわけないでしょ、幼なじみとして!」
さらに水城も腕を組み、冷静に言い放つ。
「私も同行するわ。あなた一人に突っ走られては困るの。監視と指導は必要でしょう?」
「いや監視って……」
気づけばベジも「ワン!」と吠えて影から飛び出してきた。尻尾をブンブン振りながら、まるで「自分も行くぞ」と言わんばかりだ。
拓海は頭を抱えた。
「お前ら……止めても無駄だよな」
「もちろん!」とレイカ。
「当然よ」と水城。
こうして拓海は腹を括った。
「分かったよ……じゃあ一緒に行こう。富士山へ!」
――その声は、まるで新しい災厄の始まりを告げる合図のように、山口の空に響いた。
「農民こそが最強です。〜うっかりダンジョンを水没させたら世界最強になってしまいました〜」もよろしくお願いします!
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