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第2話 神谷の回想

あの日、俺は水に沈んだ通路の奥で意識を失った。


目を覚ました時、そこは静まり返った水没ダンジョンの一角だった。水は引き、壁は黒く干からび、ただただ寒々しい空間。


飢えと渇きに苛まれ、朦朧とする中で見つけたのは、異様に輝く野菜だった。魔素を帯び、淡い光を放つゴーヤやカボチャのような実。気味悪さよりも本能が勝った。


――食わなきゃ死ぬ。


そう思ってかじりついた瞬間、舌を焼くような苦味と共に、力が体中を駆け巡った。


「……なんだ、これ……!」


飢えは消え、体は妙に軽い。だが同時に、胸の奥で黒い炎が燃え上がるような感覚があった。

その日から、俺は生き延びるために魔素野菜を食べ続けた。


数日経つ頃には、皮膚に黒い斑点が浮かび上がり、目の奥が焼けるように熱を持った。

「クソ……どうなってやがる……」

不安よりも、奇妙な快感の方が勝っていた。飢えはなく、力がみなぎる。眠らずとも平気だ。


そして二週間が過ぎた頃。

頭の中に声が響いた。


――汝は選ばれた。


最初は幻聴だと思った。だがその声は繰り返し、俺に語りかける。


――ここは未だ死していない。汝は我を喰らい、我に認められた。

――汝は新たな核、新たな支配者。


その瞬間、全身に奔ったのは恐怖ではなかった。歓喜だ。

「……そうか。俺は、選ばれたんだ」


その日から俺は変わった。

壁から生える結晶が俺を守り、魔素が血のように体を巡る。人の言葉を話してはいても、俺の中の何かが確実に人間をやめていった。


拓海の顔を思い浮かべるたび、胸の奥に黒い怒りが湧いた。

「お前のせいだ……お前がコアを喰らわなければ、俺はこんな風にならずに済んだ……」


二ヶ月。

ただひたすらに魔素を喰らい、声に導かれるままに力を得た俺は、完全に人としての枠を外れていた。


もう戻れない。

戻る気もなかった。


「俺は人間を超えた。ダンジョンそのものだ……」


そして、拓海と再会した時、胸の奥に燃えていた黒い炎は確信へと変わる。

――これは罰じゃない。俺への祝福だ、と。

時間ができたので新EPを投稿。


新作の「農民こそが最強です。〜うっかりダンジョンを水没させたら最強に世界最強になってしまいました〜」もよろしくお願いします。


https://ncode.syosetu.com/n6868ky/


10~11月くらいまで忙しいので牛歩更新ですが、時間を見つけてぼちぼち更新します。

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