第7話 農家、ゴーヤにはまる
拓海は那覇基地の一室に“隔離”されることになった。
理由は単純明快――体内にダンジョンコアめいた球体を宿した危険人物、という扱いだ。
ただし「隔離」といっても、完全な監禁ではない。基地の敷地内は自由に出歩けるし、食堂も利用可能。むしろ普通の隊員より待遇がいい気すらする。
「いやぁ、気楽なもんだな」
「……気楽すぎでしょ」
レイカが呆れ顔で腕を組む。
水城も隣でため息をついた。
「君ねぇ、“歩くダンジョン”扱いなんだぞ。普通なら研究施設に缶詰にされてもおかしくない。なのに何で畑仕事してるんだ」
「やることないんだよ。ベジも暇そうにしてるし」
拓海はごく自然に鍬を振るい、土を耕していた。隣ではベジが畝を掘る手伝い……いや、半分以上は遊んでいるように見える。
結局、拓海は隔離から一週間の間、ほぼ毎日農作業に勤しんでいた。
隊員たちも最初は警戒していたが、気づけば「収穫係」として自然に受け入れられつつある。
「おい見ろよ、あの隔離対象。昨日なんて白菜抱えて食堂に直行してたぞ」
「今日の味噌汁、妙に美味かったと思ったらそういうことか」
「歩くダンジョンコアが農業支援してるとか、笑うしかねぇ」
噂は基地内であっという間に広まった。
拓海本人はというと――。
「魔素をスキルに使えば、少しは体内のコアが減るかと思ったんだけどなぁ」
畑の隅に座り込み、汗を拭う。
「どうだったの?」とレイカ。
「微塵も変わらんってさ。俺の魔素、ダムどころか海レベルらしい」
「残念でしたね」水城が冷ややかに笑う。
とはいえ、農作業の成果は確実に現れていた。
この一週間で収穫された新鮮野菜が、食堂の献立を大いに豊かにしたのだ。
「今日のチャンプルー、うめぇ!」
「こっちのゴーヤカレーも最高だ!」
「ベジの分まで作ってやらないと拗ねるぞ!」
拓海もすっかりゴーヤにハマり、毎日のようにゴーヤチャンプルーを食べていた。
そしてベジも例外ではなく、生のゴーヤをそのままボリボリ食べている。
「ワン!」(もっと持ってこい!)
影から飛び出しては畑のゴーヤを齧り、拓海に叱られる……が、すぐにまた繰り返すのだった。
こうして「隔離生活」というより「農家生活」にしか見えない日々が続いていたが――。
その日の夕方、事件は起きた。




