第6話 農家、歩くダンジョンとなる
拓海が目を覚ましてから数日後。那覇基地では、拓海とベジの精密検査が行われていた。
まずはベジ。
検査結果を見た瞬間、研究班の技官たちが一斉にざわめく。
「……信じられない。数値がSSランク級ボスと同等、いや、それ以上だ」
「ステータスの伸び幅がおかしい……。こんなの、規格外だろう」
能力自体は以前と同じ――巨大化、影潜り、威圧吠え、高速移動。しかし、それぞれの威力や効果範囲が桁違いに強化されていることが判明した。
特に巨大化時の筋力値は、理論上「要塞を体当たりで吹き飛ばせる」ほどだと分析され、調査員たちは開いた口が塞がらなかった。
ベジ自身は尻尾を振り、拓海の足元にじゃれついているだけなのだが、その無邪気さが余計に恐ろしかった。
一方、拓海の検査はさらに異常だった。
「ステータス……やはり測定不能か」
「はい。器械が弾いてしまって、数値が表示されません」
「スキル欄も……これは、すべて“空白”?」
測定結果は真っ白。これまでの「農家の慈愛」や「吸収」など、全てのスキル名が消えていたのだ。
「え、俺のスキル消えちゃったの?」
拓海が苦笑混じりに呟く。だが、レイカの要望で試しに実演してみると――。
「農家の慈愛!」
ポーチから取り出した小さな種を地面に落とす。瞬間、緑の芽が勢いよく伸びて小さな苗となった。
「ちゃんと……使えてるじゃない」
「いやでも、測定器には何も反応が……」
詳しく解析すると、拓海がスキルを発動するたびに体内の“球体”が反応していることが分かった。つまり、今の拓海は体内の球体を媒介にスキルを発動しているらしい。
さらに驚くべきことがあった。
「拓海くん、あのスコップ……持ってきてないわよね?」
「え? そういえば無いな」
次の瞬間、拓海の右手に“あのスコップ”が現れた。
「……えっ」
「まさか、体内の球体から出現した?」
調査班が慌てて解析するが、スコップをしまうと再び消え、拓海の意思で自在に出し入れできることが確認された。
「つまり……体内に収納されている?」
「そんな馬鹿な。スキルですらないぞ」
「いや、球体が“ダンジョンコアの模倣”だとすれば……」
医師や研究者たちは深刻な顔で話し合う。
先日の小部屋から回収された黒い球体の破片を調べたところ、拓海の体内の球体と波長が極めて近いことが判明したのだ。
「結論を言えば、これは“ダンジョンコアに似た何か”です」
「じゃあ俺、歩くダンジョンってこと?」
拓海が冗談交じりに言うと、場の空気が一瞬凍りついた。
「……笑いごとではないな。ダンジョンコアは魔素の根源。その一部を体内に持っているとなれば、危険でもあり……同時に、とんでもない可能性でもある」
拓海は頭をかきながら苦笑する。
「はぁ……また面倒なことになったな」
横でベジが「ワン!」と元気よく鳴いた。




