第4話 農家、謎の球体と闘う
拓海は球体に近づき、試しにスコップで叩きつけた。
火花が散り、鈍い音が響く。しかし、球体は微動だにしない。
「……ダメか。硬すぎる」
不気味な脈動を続ける球体を前に、拓海の本能が警鐘を鳴らしていた。
これは放置しちゃいけない。今、ここで止めなきゃ――。
「なら……吸い取ってやる!」
拓海はスコップを握り直し、吸収スキルを発動。
スコップの刃先から光が走り、球体に触れた部分から黒い魔素が吸い込まれていく。
その瞬間、球体からまたもや黒いモヤが漏れ出し、人型へと変わろうとしていた。
「くっそ、邪魔だ!」
拓海はポケットからゴーヤの種を掴み取り、床に撒き散らす。
「――農家の慈愛!」
瞬く間にツルが伸び、人型を絡め取り、形が固まる前に拘束していく。
拓海はすかさずスコップを突き立て、炎熱スキルを解放。
「燃え尽きろッ!」
ゴーヤごと人型は焼き払われ、灰となって消えた。
だが、問題は球体そのものだ。
吸収を続けても魔素は途切れる気配がなく、むしろ拓海の体内に流れ込む量がどんどん増えていく。
「ぐっ……あぁぁ……!」
頭痛が脳を突き破るように響き、視界が霞む。鼻血が頬を伝い、スコップを握る手が震えた。
「ベジっ……!」
気付けば、隣のベジも苦しそうに唸っていた。
テイムの絆を通じて、拓海に流れ込む魔素がベジにも分け与えられているのだ。
拓海は歯を食いしばった。
「……まだだ……まだ、吸え……っ! 止めるんだ、ここで!」
吸収は続き、球体内部の黒いモヤは次第に薄れていく。
鼓動のような脈動も弱まり、今まさに消え去ろうとしていた。
「今なら……イける!」
拓海は最後の力を振り絞り、全身の魔素をスコップに込めて振り下ろした。
轟音と共に衝撃が走り、巨大な球体は粉々に砕け散った。
破片は黒い煙となり、やがて霧散して消える。
「……っは……」
全身の力が抜け、拓海はその場に膝をついた。
ベジも隣で倒れ込み、荒い息をついている。
「ベジ……すまん……巻き込んじまったな……」
二人の視界はゆっくりと暗転していった。
ダンジョンの小部屋には、静寂だけが残っていた。




