第2話 農家、謎のモンスターと闘う
「国仲司令、報告です。掘り進めた先に小部屋らしき空洞を発見しました」
通信越しに那覇基地の司令・国仲へ報告を入れると、返ってきたのは簡潔な指示だった。
『よし、勝手に動くな。すぐ調査班を送る。そこから動かず待機しろ』
「了解」
拓海はスコップを肩に立て掛け、穴の前でじっと待つ。
――だが、待機時間は長くは続かなかった。
ズルリ……。
空洞の奥から、何かが這い出すような音がした。
「……おいおい、嫌な予感しかしないんだが」
次の瞬間、影が穴の縁を掴み、ずるりと這い出してくる。
人間そっくりだが、どこか異様。
肌は青白く、眼は虚ろに光を帯び、口元は不気味に裂けていた。
「な、なんだお前……!」
言葉を返すことなく、その“何か”は拓海に飛びかかってきた。
咄嗟にスコップを振るう。
ガキィン!!
硬質な音が洞窟内に響き渡る。
「うっそだろ……硬っ!」
鋼鉄を叩いたような感触。スコップの衝撃を受けても、人型の怪物は一歩も退かない。
続けざまに振り下ろすも、傷ひとつ付かない。
「こいつ……普通のモンスターじゃない!」
怪物の腕が唸りを上げて振り抜かれる。
拓海は紙一重で身を翻し、スコップの柄で受け止めた。
ずしりとした重みが腕にのしかかる。まともに受け続ければ押し潰される。
「……硬すぎてダメージが通らん。なら――動きを止める!」
拓海は腰のポーチを探り、農作業で使ったゴーヤの種を取り出した。
「残っててくれよ……!」
床にばら撒いた瞬間、スキルを発動する。
「《農家の慈愛》!」
ぱあっと光が走り、撒かれた種から瞬く間にツルが伸び出した。
ツルは生き物のようにうねり、怪物の両腕や足へ絡みついていく。
「……っ、いいぞ!」
怪物は暴れ、壁を削り取るほどの力で抵抗するが、ゴーヤのツルはそのたびに数を増し、さらに強く締め上げる。
やがて全身が絡め取られ、身動きが取れなくなった。
「今だぁっ!!」
拓海はスコップを逆手に構え、全身の力を込めて突き刺す。
ゴギッ、と金属がめり込む感触。
怪物の胸を貫き、その奥から鈍い音が響いた。
「……まだだ!」
すかさずスキルを重ねる。
「《炎熱付与》!」
スコップが灼熱の光に包まれ、絡みついたゴーヤのツルごと怪物を焼き上げる。
バチバチと音を立ててツルが燃え、同時に怪物の体表が黒く焦げていく。
断末魔の叫びすらなく、ただ静かに、怪物は炎に呑まれて崩れ落ちた。
残ったのは黒焦げの残骸と、わずかな魔素の残滓だけ。
拓海はスコップを肩に担ぎ直し、肩で荒い息を吐いた。
「……っぶねぇ。ゴーヤ様々だな」
ゴーヤの焦げた匂いが漂う中、拓海は穴の奥を振り返る。
あそこには、まだ何かが潜んでいるのではないか――そんな不気味な予感が胸をよぎった。




