第1話 農家、沖縄へ
北海道での激闘から、はや一ヶ月半。
各地を転々としながら農作業ツアーをこなし、気づけば11月の中旬になっていた。
拓海はといえば――。
「……やっぱり早すぎるんだよな」
効率が良すぎて、農作業だけでは済まず、農地拡大や採掘手伝いまで頼まれる始末。
一方の水城とレイカは「お目付け役」のはずが、作業地近くのダンジョンに挑んでは武者修行に明け暮れている。
「もしもし水城さん? あなた、ボクの監視役じゃなかったんですかね?」
拓海のぼやきも、当然のように聞き流されていた。
そんなこんなで農作業ツアーも大詰め。残るは沖縄だけだ。
那覇基地を拠点に、今回はツアーで初めて「Sランクダンジョン」での採掘を任されることとなった。
ダンジョンは二週間前に暁が攻略を終えており、比較的安全とされていた。
「ここには収納系スキル持ちがいる。だから掘り出したものは気にせず任せてくれ」
と、那覇基地の隊員が頼もしく笑う。
拓海は気兼ねなくスコップを振るい、ダンジョンの壁を削り進めていった。
ジャリッ、ガキッ――。
手に伝わる感触が変わった。
「……ん?」
明らかにいつもと違う硬さ。
魔結晶でも魔鉄鋼でもない、妙に“均一”な反発を感じる。
「岩盤かな……?」
そう思いながら力を込めてスコップを突き立てる。
ゴリリッ――!
鈍い音とともに、壁にヒビが走り、土砂が崩れ落ちた。
次の瞬間、ぽっかりと闇が口を開ける。
「……穴?」
覗き込んだ先は、自然に出来た洞窟とは明らかに違う。
四方が平らに削られた、小さな空間――まるで人工的に造られた小部屋のようだった。
「ダンジョンの……内部構造? いや、こんなの見たことないぞ」
かすかな魔素が漂い、壁面には何かの紋様のような線刻が浮かび上がっている。
それはまるで、ダンジョンそのものの秘密へと繋がる“入口”であるかのように。
拓海はスコップを構えたまま、息を呑んでその空洞を見つめていた――。




