第13話 農家、暁を救う
ダンジョンを脱出した拓海たちは、待機していた部隊の協力を得て、
意識のない「暁」のメンバーをそのまま基地併設の病院へと運び込んだ。
病院専属の高位ヒーラーが待ち構えており、治癒魔法の光が部屋いっぱいに広がる。
ほんの数分後には、5人全員が上体を起こせるほどに回復していた。
「……助かった。本当にありがとう」
リーダー、暁真理が深々と頭を下げる。
事情を聞くと、戦闘開始直後にヒーラー兼バッファーである陽子と雪が、
海底の砂に潜んでいたエイ型モンスターの毒針で真っ先に倒れたという。
回復手段を失ったことで戦況は一気に不利になり、あとはモンスターたちに運ばれるがままだった。
「……俺がもっと早く気づいていれば」
スカウトの羽田空が苦い表情でつぶやく。
しかし、水城が静かに首を振った。
「自然界でもエイは擬態の達人。しかも相手はSSランクダンジョン産よ。
どんな探査の達人でも、あの環境じゃ見逃すことはあるわ」
羽田は唇を噛み、やがて小さく頷いた。
真理は、今度は拓海に向き直る。
「今回の件で、私たちに足りないものが見えた。
次は状態異常耐性を身につける。SランクやAランクのダンジョンで鍛え直しだ」
その瞳に、敗北の悔しさと、それ以上の闘志が宿っている。
拓海は苦笑しながらも頷いた。
「その調子なら、世界記録もすぐに更新だな」
病室に、一瞬だけ笑いが広がる。
北海道の灰色の海は、彼らにとって試練となり、そして新たな目標を与えた。
――いつの日か、「暁」が世界最強の名を手にするとき、
今日のこの出来事も、きっとその礎になっているのだろう。




