第4話 農家、魔素で農業革命を起こす(予定)
検査の翌日。
俺は朝から畑の真ん中に立っていた。
「さて――今日は魔素全開で農作業だ!」
「……ほんとにやるのね」
畑の端で腕を組む水城教官。
「やらないと俺、全身が魔晶石になって死ぬんですよ? これはもう命がけの実験です」
「その割に楽しそうね」
「拓海ー! これ貸してあげる!」
レイカが持ってきたのは、例の長刀。
「いやそれ武器だから! 耕す道具じゃないから!」
「刃物なら土もスパッと切れるでしょ?」
「……魔素で鍬作った方が早くない?」
まずは、普通の鍬を魔素で強化してみる。
――ザクッ!
おお、スッと入る。しかも土が勝手にほぐれる。
ついでに、土の中の小石がぽわっと光って消えた。
「……今、小石燃えた?」
「魔素で浄化されたんじゃない?」
「石って浄化できるのか……?」
次に、魔素を種に直接注入してみる。
ぽんっと手のひらで転がした大根の種に魔力を流すと――
ドガァァン!
目の前で土が盛り上がり、10秒で大根が収穫サイズになった。しかも青く光っている。
「ちょ、早い早い! なんだこれ!」
「成長促進の範囲超えてるわね……」
レイカが引っこ抜くと、大根はズシリと重く、切ると中から湯気とほのかな甘い香りが立ちのぼった。
「……これ、芋けんぴの匂いしない?」
「大根なのに!?」
調子に乗って、キャベツにも魔素を注入。
5秒後、キャベツが勝手に葉をバサァッと広げ、周囲の雑草をなぎ倒す。
水城が冷たい目で言った。
「……魔素キャベツ、野生化するわよ」
「野生化ってなんだよ!」
「人が近づくと葉っぱで叩いてくるやつ」
「それはもう作物じゃない!」
結局、午前中で畑の半分が光る野菜畑と化した。
大根は光るし、キャベツは動くし、トマトは宙に浮いている。
「……楽しいけど、これ市場に出せるのか?」
「むしろ出したらニュースになるわ」
「いいじゃん、農業革命だよ!」
「革命っていうか、事件よ」
魔素農業の可能性と危険性を同時に体験した一日だった。
――でも、これなら全国で試してみるのも面白そうだ。




