第3話 農家、検査される
昼下がり、俺は畑の隅でスコップ片手に草むしりをしていた。
……はずなのに、気づけばしゃがんだまま動けなくなっていた。
頭が重い。手先も少ししびれる。
「――拓海!」
後ろからレイカの声。振り返ると、彼女と水城教官が仁王立ちしていた。
「何やってんの、あんた! 顔色真っ白じゃない!」
「ほっとけ……農家は多少体調悪くても畑に出るもんだ……」
「そういう農家根性が命を縮めるのよ!」
気づけば両脇を抱えられ、強制的に協会へ連行されていた。
協会の検査室。
魔力計測器やら水晶パネルやら、見たことのない機材がずらり。
白衣の職員がわらわらと集まり、俺はベッドの上で電極(?)のようなものをペタペタ貼られる。
「まずはステータス解析から始めるわ」
水城教官が淡々と指示を出す。
壁際の魔力計測器が起動し、パネルに文字が浮かび上がる――
名前:高山拓海
体力:∞(表示上限突破)
力 :∞(表示上限突破)
魔力:∞(表示上限突破)
精神:∞(表示上限突破)
素早さ:∞(表示上限突破)
防御力:∞(表示上限突破)
「……おい、これ壊れてんじゃないのか」
「壊れてないわ。全項目が測定限界を超えてるだけ、過負荷で回路が焼けなかっただけマシね」
職員たちがざわつく。
「農家で全数値オーバーって……前例ゼロですよ」
「農家ってそんなに強い職業でしたっけ?」
「違うわ、あんたの身体が異常なのよ。これでも前の簡易測定器の10倍まで測れるってのに.…」
水城は小さくため息をついた。
続いて、魔力循環の精密検査。
透明な魔力スキャナーが体を通過すると、パネルに淡く輝く結晶状の影が映し出された。
「……これは……」
水城教官の表情が硬くなる。
「拓海、あんたの体内に、魔晶石のような物が形成されつつあるわ」
「……は?」
「急激なステータス上昇と、過剰な魔素吸収が原因。進行すると――」
一拍置いて、水城が淡々と告げた。
「全身が魔晶石になって死ぬ可能性がある」
「……えぇぇぇぇぇ!?」
俺とレイカの声が見事にハモった。
「今のところ確実な治療法はないけど……」
水城は腕を組み、少し考える。
「ダンジョン以外で魔素を使い続ければ、進行を緩和できる可能性はある」
「……つまり?」
「ダンジョン外で農業に魔素使いまくれってこと」
「……あー、それなら出来そう」
俺の脳内で、魔素を使った自動耕運機、魔力温室、浮遊トラクターが次々と浮かんだ。
「でも魔素の無許可使用は協会的にNGだからね!」
「ケチ!」
「ケチじゃない、安全管理よ!」
笑いながらも、胸の奥には冷たい不安が残った。
……本当にこれ、農家仕事してるだけで何とかなるのか?




