第2話 農家、協会で鍛冶を見守る
午前の農作業を終えた俺は、縁側でバタリと横になっていた。
秋風が気持ちよくて、ウトウト……ウトウト……。
「……むにゃ……」
最近、妙に頭がぼーっとする。眠気が強い。
まあ、稲刈り疲れがまだ残ってるだけだろ――たぶん。
「たーくーみーっ!!」
勢いよく玄関が開き、レイカが突撃してきた。
「協会行くわよ!」
「……昼寝させろ……」
「寝る時間より優先度高い案件よ! 武器完成!」
――結局、腕を引っ張られ、山口支部の協会施設へ連行された。
協会の鍛冶工房は、村の鍛冶場とはまるで別世界だ。
魔力炉の青白い光が部屋を照らし、無数の魔道工具が壁に並んでいる。
奥では屈強な鍛冶師がハンマーを振るっていた。腕の太さが俺の太もも並みだ。
「嬢ちゃんの長刀、仕上がったぞ」
協会専属の鍛冶師が、黒光りする刀身を持ち上げる。
竹山ダンジョンの魔晶石と魔鉄鋼を融合させた長刀――刀身の根元で青い光が脈打ち、竹模様の鍔が美しい。
「うっひょー! 軽いし、魔力の流れがすっごいスムーズ!」
レイカはもう満面の笑みで素振りを始めている。
刀がひゅんひゅんと空気を切り、見ているこっちがちょっと怖い。
「……こりゃまた、物騒な竹やぶ娘が爆誕したな」
「誰が竹やぶ娘よ!」
「そうそう、拓海。あんたのスコップの解析結果が出たわよ」
水城教官が、書類を片手に近づいてくる。
「あのSSSランクダンジョンで拾ったやつ?」
「そう。協会が調べたところ――材質不明。魔鉄鋼より硬度が高い。後は、あんたが使った炎熱系のスキルが確認できたわ」
「あとね、解析班でも判別できない反応があるらしいわ。未知の能力が潜んでる可能性大」
「未知の能力……」
俺の脳内で、スコップが空を飛んだり、トラクターに変形したり、ロボになったりする映像が流れる。
「……変形はしないから」
「心読まれた!?」
そんなバカ話をしていたら、不意に視界がぐらっと揺れた。
「おい、拓海。顔色悪いわよ」
「んー……ちょっと熱っぽいだけだ。秋バテかな」
「魔素吸いすぎの可能性もあるわよ」
「大丈夫大丈夫。農家は健康第一、長生き商売だ」
笑ってごまかしたが、額にじわっと汗が滲む。
どうにも、このぼーっとする感じは、ただの疲れじゃない気がする――。
レイカの武器作成費用は、珍しい召喚系の能力を調査する報酬としてタダで作ってもらえました。




