第11話 農家、ダンジョンを畑に変える
這い出てきた異形のモンスターは、拓海のスコップによって灰と化した。
しかし、足元の水没ダンジョンはまだ沈黙していない。
内部は依然として水に沈んだまま。
そして——新たなモンスターが這い出してこないとも限らない。
「とりあえず、協会に連絡して応援を呼ぶしかないわね。もうちょっとだけ辛抱してくれる?」
水城が振り返り、拓海の顔を覗き込む。
「心配要りませんよ」
拓海は軽く笑って答えた。
不思議そうに首を傾げる水城とレイカ。
拓海はゆっくりとダンジョン入口に近づき、その両手を黒ずんだ扉に押し当てる。
「——《魔素吸収》」
ゴウッ、と空気が震えた。
ダンジョンの奥深くから、濃密な魔素が奔流のように引き抜かれ、拓海の身体に吸い込まれていく。
「ちょっと! そんなの無茶よ!」
止めようとする水城を片手で制し、拓海は続けざまに叫んだ。
「合わせて……《成長促進》!」
残っていた植物の種を、次々とダンジョンの中へと投げ入れる。
直後——ダンジョン内で芽吹いた若葉が急激に伸び、ツタとなり、木となり、あらゆる水分を吸い上げていく。
水が引き、光の差さぬはずの空間に緑が溢れた。
様々な種から生まれた多彩な植物が絡み合い、咲き誇る。
そこにあったのは——かつての暗く冷たいダンジョンではなく、まるで「植物の楽園」と呼べる洞窟。
「……ふう、なんとかうまくいった」
拓海は額の汗をぬぐい、肩で息をしながら呟いた。
唖然と立ち尽くすレイカと水城。
「さあ! 明日からまた収穫だな」
拓海が笑いながら言うと、二人は同時にため息をつき——、そして小さく笑った。




